<精神的精子−スピリチュアル・スペルマ−>
人の生殖は肉体だけではない。
精神も生殖する。
そこには男も女もない。
誰もが精子を持ち、
誰もが卵子を持ち、
互いに孕み孕ませながら、
精神の子供を産んでいく。
愛しているという言葉はひどく簡単だ。
こうして頬が触れ合うくらいそばにいれば、総ての偽りは真実に変わっていく。
見詰め合ってさえいれば、嘘は決して見抜かれる事はない。
愛しているという言葉はあまりにも曖昧で、その存在の意義すら持たない。
それでも、
何かに憑かれたように叫び続けるのは、真実を偽りに変えようとするからなのかもしれない。
終わる事のない想いだと知っているから、終わらせようと願う。
感覚の無くなっている胸に抉るように傷をつける。
そうしてこの想いを確認している。
目に映るあなたをどれほど陵辱しても何も変わらない。
肉体的苦痛を与えるだけ。
自分達2人は形のあるものを残すことは出来ないけど、ここに楔を穿つたびにずっと放ってきた。
オモイのかけら。
汚い想いも醜い想いもすべて、その中に植え付けてきた。
そして肉体を犯されながらそれ以上に精神を犯されて、孕んできた。
孕んで孕み続けて、総て絞り取られて抜け殻になっても、精神はあなたの中で新たな生命を育み続けている。
そしてこの中にはあなたの精神が、あなたの中と同じように脈打っている。
こうして自分たちはお互いを犯しながら、お互いに孕みながら、
共に違う場所へと向かって行く。
同じ道程を歩いて行く。
そしてまた新たな精子を培って、またお互いを犯して行く。
進化する。
時には竜巻のように激しく。
時にはさざ波のように緩やかに。
そうしてまた孕んでいく。
そしていつかお互いに交じりあい、
ふたりはひとつになっていく。
ひとりはふたつになっていく。
見えない絆で繋がっている。
そこにはどちらのものとも判別できない精子が存在している。
これはあなたが犯した結果。
これがあなたの孕んだ結末。
二人の精子はすでに多くのひとに宿った・・・・。
END