I&I

 

 

 

 

 

君を多く知らなければよかった。

 

 

 

 

 

 

 

ふと見上げた空の下で何気なく思った。

 

 

今頃君は何してるんだろう。

 

もうずっと会っていない。

 

 

つい隣を見て、君の居ない空間の大きさに気付く。

 

 

こんなにも一人は淋しいものだっただろうか。

 

 

 

 

 

 

淋しさを埋めるようにどんどん仕事をするけれど、そんな時余計に君を求めている自分に気付く。

 

何も言わなくても解ってくれる筈のそのニュアンスを解らないと言う他人に、どうしてと思う。

 

そんなの解らなくて当たり前なのに、そんな事に腹を立てている自分に余計に腹が立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

慣れと言うのは恐ろしい。

 

本当にそう思う。

 

当たり前ではない筈のものが、二人の間では当たり前になって行く。

 

それだけの時間が確かに存在していた。

 

 

 

そしてその時間よりも速いスピードで自分達は走っていた。

 

振り向く事をしなかった。

 

先だけを見ていた。だけど先を読む事もしなかった。

 

 

 

 

 

いつも自分を見ていた。

 

 

 

 

君を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

与え合う刺激が心地良かった。

 

同じ時間を共有していた。

 

同じ痛みを感じていた。

 

何よりも君が嬉しそうに笑っていた。

 

この場所で。

 

 

 

 

 

 

 

君を多く知らなければよかった。そうすればこんな痛みも知らずに済んだに違いない。

 

心の中がぽっかりとなって、まるでオズの魔法使いに出て来るブリキのおもちゃみたいだ。

 

それならばいっそ何も感じない、記憶させられた痛みしか感じない機械になってしまえたら。

 

 

 

 

 

変な話だね。

 

近い将来、機械が感情を持つよなんて話していた自分がこんな事思うなんて。

 

あのブリキのおもちゃだって人間の心を欲しがっていた。

 

心が無いって事は愛する事が出来ないって泣いていた。

 

 

 

 

きっとそうなんだよね。

 

心を無くしてしまったら、君を思う事さえも出来なくなる。

 

この痛みを引き換えに愛する事を止められてしまう。

 

 

 

 

たったひとつ。

 

 

 

僕の大切な気持ち。

 

 

 

 

それだけは守りたい。

 

 

たとえどんなに淋しくても。

 

 

それにきっと君もそう思っているに違いないよね。

 

だって自分達は同じ時間、同じ思いさえ共有したんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

どこにいても君だけは涙を流さぬように、どこにいても君だけは笑顔でいられるように。

 

君はそう歌いかける。

 

最後に『信じて』と。

 

 

 

力強い君の言葉はきっと多くの人を勇気づけて行く。

 

 

僕もその一人。

 

 

君の言葉にどれほど勇気を貰ったか解らない。

 

 

 

 

 

そして君も。

 

 

 

 

 

 

それはきっと自分に対してのメッセージでもあるんだろう?

 

そういう所、妙に素直に出てしまう君だから。

 

でもこの言葉に辿り着くまでに色々あったんだよね、きっと。

 

僕がこの淋しさを仕事で埋めようとしたように、きっと君も自分の気持ちと向き合ってきたんだよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

君を多く知らなければこんな淋しい思いもしなくて済んだかもしれないけど、

 

君を多く知っていくうちに巡り会ったいろんな気持ち、今は大事にしたい。

 

 

君を好きになって辛い事ばかりじゃなかったよね。

 

いつも笑っていたよね。

 

毎日が本当に楽しかったよね。

 

 

 

 

 

ありがとうと素直に言えるようになるまではまだ時間が掛かるかも知れないけれど、

 

 

いつかきっと、

 

 

また君の隣で笑っていられる自分でいたい。

 

 

そして君にとって、ここが一番安らげる場所であれるように、

 

 

いつの日もそう願ってる。

                 END