<Love affair>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がついたら隣に座ってた。別に示し合わせたわけじゃないのに。何となく自然に、それが当然のように。

座って初めて周りの視線を感じて、

 

 

「あ・・・。」

 

 

とお互いに声を出す。

初顔合わせと言うプレッシャーからなのか、無意識の内の習性なのか、まるで同じように計ったかのようなタイミングで席につき、同じようなタイミングで声をあげ、顔を見合わせた。

ガタッと席を立ち他へ移動しようかと視線を巡らせた先にもう席はなく、仕方なくまたすごすごと席につく。そのタイミングも全く同じ。あぁなんてバツが悪いんだと2人が曖昧な苦笑を浮かべていると、向かいに座った紫吹さんが豪快に笑った。

 

 

「おもしろい!ちょっとしたコント見てるみたい。」

 

 

そのセリフを皮切りにみんながいっせいに笑い出す。

 

 

「幸先いいじゃないですか、コメディーなんだから。みんなこの調子でひとつお願いしますよ。」

 

 

演出家の一言で稽古場の雰囲気がカチリと変わる。

奇しくも志気を上げる結果となってしまった自分達の行動を、2人は苦虫交じりの愛想笑いでやりすごした。

 

本読みが始まるとみんないっせいにプロの顔になる。

配られたばかりの第一稿台本に目を通しながら、何やら書き込む人、自分のセリフに丸をつけたり、マーカーでチェックを入れる人、パラパラと先をくりながら自分の出番を確認する人、様々だ。

大介はそんなキャストの様子を観察しながらインプットされていなかった個人個人の声質、セリフのテンポを計る。曲を作る時点で大介はこの第一稿よりももっと荒い荒台本を渡されており、セリフにはほとんど聞き覚えがあった。変更点は数ヶ所あったものの大幅に作り直しを強いられるところはなさそうだと演出家からも言われていた。

 

そんな事もあって初見のキャストよりかは幾分余裕があった。

 

隣の博之が声を発する。背もたれに寄り掛かる振りでその横顔を盗み見る。

 

見た事のない顔だ。

役者としての彼の顔。それもまだ未完成の。

演出家の指示も何も入っていない、彼そのものから生まれた荒削りなジョージと言うキャラクター。それが彼の感じたままに動く。

 

演出家の中にはこの初見を見てそのキャラクターを180度変える事もあるという。その人の持っているものが初見と言う即興的な瞬間に演出家の意図を超えてたまらなく魅力的なキャラクターを生み出すのだという。レコーディングにおけるファーストテイクマジックのようなものかと思う。

大介はそんなものを博之に感じた。

決して他のキャストに比べると流暢な台詞回しではないが、今まで大介の中では薄っぺらいものだったジョージと言う役が、厚みを持って生々しく感情を露わにしている。

ボーカリストではない、役者貴水博之がそこにいた。

思わず今を忘れて見惚れてしまう。

まるで別人のようだ。整った顔立ちは惚れた欲目を抜きにしても男らしく、輝いて見えた。

 

彼は、生まれながらのスターなのだ。本人が気付いていないのが腹立たしいほどに。

 

輝かしい原石はこうして磨かれ、なおも燦然と光を放つ。

自分の手を離れても・・・。

 

 

見つけなければ良かった。

彼の光を誰にも知らせなければ良かった。

どす黒い独占欲。胸糞が悪くなる。

 

例えば自分が見つけなくても、きっと別の誰かの目に止まっていたんだろう。彼はそういう運命にあるのだから。

彼はきっとそれでも上手く行っていたに違いない。けれど自分は・・・

 

自分は彼じゃなければ駄目だった。この音は、彼の声によって活かされる。

光を与えられたのはむしろ自分の方だ。それなのに、彼は僕に出会えて良かったと言う。本当にありがとう・・・と。

 

ネガティブな思いに引きづられそうになって大介は必死に博之から目を逸らす。真剣に台本と向き合い、目を離さないようにする。視線を上げてしまえばきっと、追ってしまうと解り過ぎるくらいに大介には解っていたから・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初稽古を終えて何となく挨拶を交わし、飲みにでも行きますかと声があがる中で、当然のように博之が大介を誘う。

 

 

「大ちゃんも行くでしょ?」

 

 

誰にでも簡単に振りまくその笑顔を向けてくる博之に大介はイラッとする。

そんな博之を無視していつもの穏やかな笑顔で大介はやんわりと断わりの言葉を入れた。

 

 

「すみません。まだこの後がありますんで、残念なんですけど。」

 

 

「え〜、浅倉さん、お帰りですか?残念だなぁ。」

 

 

がやがやと移動し始める人の中を縫って帰り支度をする。

 

 

「大ちゃん。」

 

 

この後に予定などないことを知っているのだろう博之が訝しんだ表情で近付いてくる。

 

 

「この後・・・仕事?」

 

 

本当は違う事を言いたいに違いない博之は、それでも周りを慮ってかそれ以上の言葉を飲み込んだ。

 

 

「うん。ごめんね。ちょっといろいろ閃いちゃってね。消えないうちに形にしたいなって。」

 

 

バタバタと荷物を片付ける振りで視線を合わせない。

 

 

「そ・・・っかぁ・・・。」

 

 

明らかに落胆の色を滲ませて博之が言う。

そんな博之を突き放すように大介は博之よりも距離のある人達に声をかける。

 

 

「それじゃあ、お先に失礼します。お疲れ様でした。」

 

 

にこやかに頭を下げると博之を一度も見ることなくその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くだらない言葉の呪縛。

やることなんてないはずなのに、大介はそのままスタジオへと戻った。いつものように電源を入れる。そこまでして初めて、自分の行いのバカバカしさに溜息をついた。どっかりとイスに腰を降ろす。

 

大人気ないと我ながら思う。

冷静に考えれば博之にだって別の顔があって、自分の関与しない付き合いがある事だって解る。今の彼を作り上げたものがそう言うもののおかげである事も。

頭では理解出来る。理屈では納得しているのだ。

けれど・・・。

 

 

          初めてだったんだ。別の場所にいる彼を見たのは。

 

自分の知らない大人な表情。

他を寄せ付けない彼独特のオーラ。

自分の意志を明確に打ち出す。

存在そのものが、輝きを放つ・・・。

 

自分の知っている彼はどこか頼りなげで、どちらかと言えば人懐っこい甘えたがりに見えていたが、そんな顔を彼は微塵も覗かせない。

 

 

チクショウ。こんな顔を隠し持っているなんて。なんて卑怯なんだ。

なんだって自力で出来るじゃないか。やっぱり僕なんて必要としていないんだろう?

 

ようは過保護にしたかったんだ。

持って生まれた性質なのか、長年に染み付いた長男と言う癖なのか、自分の懐でバカみたいに可愛がり、しょうがないなと言いながら世話を焼く事を望んでいる。聡い彼はそれを敏感に察知し、やはりこちらも生来の末っ子気質でそれをなんなくやってみせる。程好いところで甘えて見せて、最後はあなたが決めてよと決定権を譲ってみせる。自分には難しくて解んないよと。

僕はそんなことにも気付かずに、その彼が彼の総てだと思い込んで・・・。

 

 

これは嫉妬だ。

何でも手に入れてしまう彼への。

人の目を惹き付けてやまない彼への。

 

僕が逆立ちしても敵わないもの。彼はいるだけで人の目を奪う。

僕が努力で築き上げてきたものを彼は一足飛びに軽々と飛び越えてしまう。彼が本気になれば自分なんてひとたまりもない。

しょうがないのは自分じゃないか。

 

 

ウンザリと、イスに仰け反る。

 

今頃彼はあの屈託ない笑顔を振り撒いて、多くの人の好意を勝ち取っているのだろう。本人にその気がなくとも、好意以上の感情を抱かせているのだろう。そしてケロっとした顔でこう言うんだ。

 

 

「みんな良い人達で楽しかったよ。大ちゃんも来れば良かったのに。」

 

 

彼にかかれば悪い人なんていなくなってしまう。その無邪気な笑顔で微笑まれたら誰だって毒気を抜かれる。

卑怯な男なんだ、彼は。

 

 

グルグルと出口のない思考に囚われている事にウンザリした大介は、先程から幾何学模様を映し出しているパソコンのディスプレイに目を向けた。

メロディなんて到底浮かばない。そのつもりでここにこうして座っているわけじゃない。

 

 

あぁ、むしゃくしゃする。

 

 

何もかもが思い通りにはいかない。

彼の前では自分なんてただの電子オタクだ。

 

 

ディスプレイを睨みつけるように凝視し、その幾何学模様に八つ当たりでもするかのようにバチンと電源を落とした。奏でられる音色を待っていた電子機器がいっせいに沈黙する。その勢いで立ち上がり、部屋を出ようと振り返った先、ドアのところにポツリと立っている人影。大介は思わずビクリとして立ち止まる。

その人影の主が確認できると、大介は苦虫を噛み潰したような顔で思わすその名をこぼした。

 

 

「・・・ヒロ。」

 

 

入口に立ち止まったままの博之がぎこちなく笑う。

 

 

「何で?みんなと一緒に飲みに行ったんじゃないの?」

 

 

精一杯の優しい声で言う。

 

 

「顔だけ出して帰って来ちゃった。大ちゃんのこと、心配で。具合、悪いの?」

 

 

入っていい?と視線だけで断わると博之はスタジオの中の大介に近付く。

 

 

全くなんだってこの男はこうもイライラさせるんだ。今、一番会いたくないのに。

 

 

自分の中にわだかまった行き場のない感情をもろにぶつけてしまいそうで、大介はそっと近付いて来る博之から身体をずらした。

 

 

「大ちゃん?」

 

 

「別に気にする事なかったのに。僕は仕事だって言ったろ。ヒロはヒロの仕事をしろよ。」

 

 

軽く鼻で笑ってみせる。

そんな大介の様子に博之は近付いたその距離をそれ以上詰める事も出来ず問うた。

 

 

「何か・・・怒ってる??」

 

 

何でこうなんだ。

この男のこう言うところが無性に腹が立つ。何でも聞けば答えが得られると、まるで自分には一切の非がないかのように。

 

実際、大介のしている事は単なる八つ当たりにしか過ぎない。自分が得たくても得られないたくさんのものを簡単に手にしている博之への嫉妬にしか過ぎない。

そんな事は大介自身、一番良く解っている。

解っているが、どうする事も出来ない袋小路にはまっている。

 

 

性格の違い、育った環境の違い、そんなもので片付けてしまえたらこんな行き場のない思いを抱えたりはしない。

 

手に入れたかったのだ、総てを。

彼の持つ奔放さも、その神に愛された才能も。

 

自分ではどうする事も出来ないそれらを、今まで見ない振りをして来た。気付けば自分が苦しくなる事など解りきっていたから。それなのに・・・。

 

見てしまった。

見惚れてしまった。

その瞬間から、こんなにも苦しい。

 

 

「怒ってなんか、ない。」

 

 

「ホントに?」

 

 

「あぁ。」

 

 

「大ちゃん。」

 

 

視線を外したままの大介を覗き込むように博之が言う。

 

 

「ねぇ、こっち向いてよ。」

 

 

「怒ってなんかいないって言ってるだろ?しつこいよ!!」

 

 

吐き捨てた大介を柔らかな体温が包む。

 

 

「・・・!?っ離せ!!」

 

 

抱きしめられた腕の中で大介がもがく。しかしその腕は優しいのに何故か強く、振り解く事が出来ない。

 

 

「離せ!!」

 

 

「いやだ。」

 

 

博之の腕は柔らかく大介を包む。大介は何故か泣きたいような気持ちになってやみくもにその腕から逃れようともがいた。

 

 

「離せ!!・・・離せよぉっ!!」

 

 

強く博之の胸を叩くと、もう何も出来なかった。

顔を上げる事が出来ない。自分のこの情けない顔を決して見せるわけにはいかない。それは総ての負けを意味してしまう。

 

 

負け・・・?

 

 

何に?

 

 

あぁもうそんな事じゃあない。

 

 

打ち付けた拳をそのままに俯いたままの大介の背を、髪を博之が優しく撫でる。

 

 

苦しい。

 

 

その触れられた指先からじんわりと広がって行く、温かく甘い痛み。その痛みだけが自分を自分たらしめる唯一確かなもの。

自分を追い詰めるのも、自分を許すのも、総てはこの場所にある。憧れて、支配したくて、でも決して手には入らない、たったひとつ、稀有なもの。

だから、苦しい。

 

 

「大ちゃん、ねぇ、こっち向いてよ。」

 

 

そっと博之が耳元で囁く。大介はただ首を振って拒絶する。くいしばったはずなのに、零れ落ちる涙。

 

 

「オレ、何かした?大ちゃんの気分を害するようなこと、した?」

 

 

そうじゃない・・・。

 

 

「ねぇ、何でもいいから言って?」

 

 

博之の困惑した声はそれでも温かく、大介はますます自分がちっぽけなものに思えた。

 

 

「・・・くしょぉ・・・。」

 

 

ドンと強く博之の胸を打ち付けて、大介はうめいた。

 

 

「ちくしょお・・・ちくしょお・・・!!」

 

 

「大ちゃん・・・?」

 

 

「・・・まけたく、ねぇ・・・っ。」

 

 

ギリギリと唇を噛み締めて、グッと目頭に力を込めて、これ以上惨めな自分を曝さないために抗う。

これ以上ないほど無様な自分が何を抗っているのか、矛盾している。けれどなけなしのプライドで必死に踏ん張り、きっと誰よりも自分を甘やかしてくれるだろう腕の中から抜け出す。

 

 

「だい・・・ちゃ・・・?」

 

 

突き放された博之は早くも背を向けてしまった大介に呼びかける。

 

どうしても負けられないのだ、この男だけには。

初めて会ったあの時から、大介は常に先を歩いて来た。2人の関係が変わってからもそれは変わらない。

もし仮に、どちらかが何かを譲らなければ2人の関係が壊れてしまうのだとしても、大介には譲るつもりはない。この関係を壊したいと言うのではなく、それが自分が選んだこの男との関係だと信じているから。ただ、彼はそんな事、微塵も考えてもいないというだけの事で・・・。

 

博之は常に自由だ。何をする時でも、彼は自分の感を疑ったりはしない。何処にでも躊躇わず進む。迷いはない。そして総てを手に入れる。その多くの人を魅了する存在の輝きで。

それが無性に腹立たしい。

 

 

「大ちゃん。」

 

 

背中に響く博之の声に耳を塞ぎたくなる。

 

どうして、

自分達はただの恋人同士になれなかったんだろう。ごく普通の恋人同士のように互いの存在だけを愛し合う事が出来なかったんだろう。

奏でる音も、響かせる歌声も、賞賛の嵐、第三者の価値基準、選ばれし者への妬み、そんなもの総て投げ捨てて、ただ心穏やかに互いを慈しみあうことが出来なかったんだろう。

そうすれば、どんなに幸福な関係に辿り着けただろう。

穏やかな時間を過ごすことが出来ただろう。

けれど2人はそれを切り離す事なんて出来ない。

この音が、自分達にとっては総て。自分の価値を決めるたったひとつの標なのだから。

 

 

「お前なんかに・・・負けたりなんかしない。」

 

 

苦しい胸のうちを静かに曝す。拳を握り締めもう一度強く誓う。

 

 

「お前だけには絶対に負けない。」

 

 

目も、噛み締めた唇も赤くして、大介は振り返り博之を見つめた。

 

 

「大ちゃん・・・。」

 

 

博之はそんな大介から目を離せない。

グッと睨みつけるような視線を和らげるように博之は笑った。

 

 

「いいよ、あなたの好きにしていいよ。オレはあなたがいればそれで・・・。」

 

 

そっと大介に手を伸ばす。が、その手を大介が払う。

 

 

「逃げんな。」

 

 

「大ちゃん・・・?」

 

 

「もうそんな嘘に騙されない。そんなお前だったら、いらない。」

 

 

真っ直ぐに告げられた言葉に博之が息を飲む。

 

 

「何でも手に入るくせに、いつまでも甘えた事言ってんな。今日見せた顔が本当のお前なんだろ?」

 

 

「なに・・・言ってんの・・・?大ちゃ・・・。」

 

 

大介の言葉に博之は困惑した。が、そんな博之に大介は滅多に呼ぶ事のない名を呼んだ。

 

 

「博之。」

 

 

ヒタと視線を合わせる。

 

 

「もっと貪欲に求めろよ。これがオレだって見せつけろよ。そうしたら笑ってやる。この男を見つけたのは僕だって。」

 

 

「・・・大ちゃん・・・。」

 

 

「だから、僕は絶対にお前なんかに負けたりはしない。」

 

 

強い、決意に満ちた眼差しが博之を射る。苦しみもがいて、その先に出した結論がこれだと言うのなら・・・。

 

博之は静かに笑った。

 

あなたの出した結論は、厳しくも尊い。

 

 

「解ったよ、大ちゃん。オレもあなたには絶対に負けない。」

 

 

自分達は、ただの恋人同士でいる道を選ばない。その選択肢は、もうとうの昔から存在すらしていなかった。

憧れない訳ではない。ただ、自分達らしからぬと思うだけだ。

奏でる音も、響かせる歌声も、総てが互いを輝かせるためにあるのなら、そこにある憧れも妬みも総ては愛情の裏返しでしかない、そう思う。

互いを一番輝かせるのは互いしかないと、またそうでありたいと願うから、妥協は出来ない。

 

視線を合わせて笑う博之につめより、その胸倉を大介が掴む。驚く博之の唇を強引に塞いで噛み付くようなキスをする。息が続かなくなり脳の奥が痺れるような感覚の中、そっと離れた唇が告げる。

 

 

「愛してる。」

 

 

それはこれ以上ない真実の告白。ドロドロとした答えの見えない感情の中で唯一泥にまみれない穢れない真実。

 

 

「愛してる。」

 

 

もう一度告げる。

胸を焦がすような鈍い痛みが2人を支配する。

 

 

ただの恋人にはなれない。

自分達は音と共に始まり、音と共に終るのだろう。だからこそ苦しみ、妬み、そして唯一無二の存在として愛し合う。

そういう宿命の元に出会ってしまった。

そう、出会ってしまったのだ。

 

 

いつか、

相手を殺してやりたいと思うような恋情に焼かれる日が来るのかも知れない。今でさえ、愛する深さと同じ程、のた打ち回って、決して自分のものにならない事を恨み、それでも離れられずにいるのだから。

終わりは、どちらかの死を持ってしか訪れないのかも知れない。

それでも互いを輝かす事が出来るのは互いしかないと、この肌をもって知っている。

それならば、その輝きを失わないように、相手にも失わせないようにキリキリと昇り続けるしかないのだ。

この、気持ちと共に。

それが2人のあの時からの在り方だから・・・。

 

 

掴んだままのその手をもう一度引き寄せ、大介は博之の瞳の奥をじっと覗き込む。

この瞳に映り続ける為に、自分は決して負けはしない。必ず先を歩く。

 

 

「愛してる。」

 

 

何かの証のように繰り返される言葉。もう幾度となく告げた言葉を、今また告げる。

 

 

「愛してる。」

 

 

決意の言葉は繰り返される。

覗き込んだ瞳に互いが映る。その姿を閉じ込めるようにそっと目を閉じる。

 

 

         愛してる”

 

 

その言葉を飲み込むように、2人は唇を触れ合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

     END 20090817

 

 

 

 

                                                                                                                   →おまけ