差し出した小さな箱をハテナ顔で見つめる林さんに、

 

 

「今日、バレンタインじゃないですか。だから。」

 

 

って言うと、「あぁ。」っと納得した顔で、

 

 

「いいんですか?」

 

 

なんて控えめな事を。

 

 

「何言ってるんですか、いつもお世話になってるじゃないですか。僕もいろいろ無理言っちゃってるし。」

 

 

そう言ってハイって差し出すと、林さんはにこりと笑って、

 

 

「ありがとうございます。」

 

 

って嬉しそうにチョコを見つめた。

 

 

「この歳でこんな風にチョコを貰うなんて、ちょっとてれますね。」

 

 

林さんの和やかなムードに僕もなんか急に照れくさくなった。

 

 

「それじゃあ。」

 

 

止めておいたエンジンを再び入れて走り出そうとすると、

 

 

「あの!!」

 

 

そう言って林さんはペラペラと手帳を捲った。

 

 

「貴水さん、明日はオフです。明後日も15時入りなんで、もし音合わせとかあるようでしたら時間空いてますんで。」

 

 

にこやかに言う林さんにちょっぴり面食らって、「ありがとう。」って答え、僕は車を走らせた。

 

 

 

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