冬は、夜が長い気がする。
キラキラと通りの向かいの家のイルミネーションが輝いてる。窓際には大きな靴下。きっとあそこの家では今頃あったかいクリスマスディナーをお母さんが作ってくれてるんだろう。さすがにこの住宅街ではクリスマスのざわめきは大きくないけど、それでもこんなふうにサンタの訪れを心待ちにしてる子供の姿とかを感じると今日がクリスマスなんだって痛感させられる。もうサンタを心待ちにする子供じゃないけど、やっぱりクリスマスは特別。

「いいの。今日はジョン君の誕生日だもん。」

そう自分に言い聞かせて、今日という日をすり替えようとしてみる。
ブランケットちゃんとパウダーちゃんも呼んで0時を超えてからジョンの誕生パーティーをして、かなり明け方まで起きてたのに、いつも同じサイクルな僕はいつもどおり昼過ぎには目が覚めちゃって、クリスマスなんて眠ったまま通り過ぎてやろうって思ってた目論見は遅いお昼の太陽と一緒に崩れさった。
だから夜が長い。
こんな日は迂闊に誰かを誘うわけにもいかないし、予定のない僕は一人で家にこもってるしかない。
僕だって美味しいディナーとか食べたいけど、こんな日に一人で食べるディナーは美味しさより淋しさの方が勝っちゃうから・・・。
やっぱり仕事入れておけばよかった。そうしたらこんなふうに淋しい思いしなくて済んだのに。
携帯にはいろんな人からのクリスマスメッセージが。だけど今一番欲しい人からのメールはない。きっと今頃・・・。
予定なんかないよって笑ってたけどヒロだもの、そんなはずない。だけどもしそれがホントなら・・・。
聞いておけばよかった。軽いノリで予定あるの?って。そしたらこんなふうに来ないメールを気にする事もなかったのに。

「僕って、ホントヒロの事になると優柔不断だよね・・・。」

僕は誰もいないリビングのソファで一人ため息をついた。

 

 

 

軽く道が混んでいる。クリスマス渋滞。多分この先にイルミネーションのスポットへ向かう分岐点があるからだ。
この時期のドライブはイルミネーションが綺麗だから結構好きだけど、この渋滞だけはイライラする。ま、みんな同じ事を考えてるからなんだろうけど。歩くよりは車の中の方があったかいし、他人からの視線も気にならない。二人だけの世界を作るには車の方が何かと都合がいいことも確か。
だけど目的地へ向いたいだけのオレにとっては迷惑な話だ。

大ちゃんからのメールは来ない。きっと今頃あの家に一人で居るはずなのに。さすがに今日はアベちゃんも呼べないだろうし、他の人と過ごすなんて聞いてない。最近遊びを覚えた大ちゃんはだいぶ外へ出ていくことを覚えたみたいだけど、まだ自分から呼び出して・・・ってとこまではいってないみたいだ。誘われれば出かけるっていうスタンス。今まで音楽一筋で脇目もふらずに生きてきたからこういう事を心配する必要もなかったけど、最近は気付くとフラっと出掛けている。別に悪いとも思わないしもっと大ちゃんにも楽しみを見つけて欲しいとは思うけど、その話をあまりに楽しそうに目をキラキラさせながら話されると正直イラっとする。ちょっとだけね。

だけどさすがに今日は事情が違うよ。クリスマスなんだよ、大ちゃん。一人で淋しいでしょ?オレからの連絡、待ってるんでしょ?だから出掛ける事も出来ないんでしょ?知ってるよ、ちゃんと。

大ちゃんはどういうつもりなのか、オレには彼女がいると思いたがってるところがある。まぁ、実際大ちゃんとそういう事をした時に彼女がいた事もあったけど、その事を言った覚えはないし、そもそも大ちゃんとのそういうのは彼女とのそういうのとは全然意味が違う。好きだからとか興味本位でってだけで大ちゃんは抱けないよ。大ちゃんの本気度は一応オレなりに理解してるつもり。あなたは遊びで抱ける相手じゃないよ。だけど、あなたは遊びにしてしまいたいんだろうね。そうしないと都合が悪いから。期待を持ちたくない、その気持ちは解らなくもないけど、そもそもそうなった段階で遊びじゃないことくらい解るでしょ?一度きりならまだしも、それなりにオレ達回数重ねて来てるよね?その全てを遊びで片付けてしまえるの?

・・・まぁ、解らなくもないけどね。その方がそれ以上入れあげなくてすむ。オレ達はユニットのパートナーだし、恋愛関係を挟み込むと余計にややこしくなる事は確かだし。でもだからってさ、大ちゃんはオレの気持ちを疑いすぎだろ。確かにドライな関係の方が楽な事は認めるよ。恋愛だけに縛られたくないってオレは思ってる。だから大ちゃんがある一定のラインから踏み込んでこない事は助かってる。だけどさ、たまにはわがまま言っていいんだよ。こういう時くらい一緒にいたいって言えばいいのに、自分は本命じゃないからとか思ってるんだよ。じゃあオレの本命は誰なわけ?オレの方が教えて欲しいよ。

そもそも本命とかそういうの、めんどくさい。大ちゃんから連絡くるのをオレがこうして待ってる時点でこの日は貴方のものでしょう?それに気付かないなんて、あなたバカすぎるよ。だからイジメてみたくなるんだ。時々。いつもあなたは視線で訴える。言葉に出してくれた事はほとんどない。誘うのはいつもオレであなたはそれをじっと待ってるだけ。だから今日は何も言わない。大ちゃんからオレのところへおいでよ。
ねぇ、早くしないとクリスマスが終わっちゃうよ、大ちゃん。

 

 

 

2011/12/24 21:15
From ヒロ
Sub おめでとう!!!!!!


ジョン、誕生日おめでとう!!!!!!


確か今日だったよね?


 ‐END‐



 


2011/12/24 21:18
From 大ちゃん
Sub ありがと

覚えててくれたの?
ジョンも5歳になりました(*´∀`*)
もうすっかりお兄さんのはずなんだけどね(-_-メ)
ブランケットちゃんとパウダーちゃんも呼んでもうパーティーしちゃったの。
今年は図鑑に載った記念にイケ犬のケーキだよ!!


  −END−


 


2011/12/24 21:22
From ヒロ
Sub 覚えてるよ

だってクリスマスイブじゃん。
忘れられないよ
ジョンはいっぱいいろんな人がお祝いしてくれるから幸せだね

ジョンの幸せを願って

Merry-X'mas!!!!!!


  −END−

 

 

 


 

こんな時にジョンの誕生日のメールなんて・・・。

覚えていてくれたことは嬉しいけど、でも今日は・・・。

やっと来たメールの中身がそれだなんて、やっぱり今日の事には触れちゃいけないって事・・・?もう誰かと一緒にいるのかな?それともこれから?

聞いてもいいのかな・・・?今、何してるのって、聞いてもいいってことなの?こんなタイミングにメールを寄越すって。それとも・・・。

解んないよヒロ。僕、ヒロの気持ちが解んない。確かにはっきり聞いたことはないけど、ヒロはいつも優しいから、僕を傷付けることを言わないだけで、ホントは・・・。
聞いてみたいけど、このままの関係で、失うよりは全然いい。ヒロを失うなんて考えたくない。もうあの頃みたいな思いはしたくないから・・・。でも・・・。

これが神様がくれた最後のチャンスなら・・・。

 

 





2011/12/24 21:29
From 大ちゃん
Sub 今

ヒロ、今 何してるの?
忙しいの?


  −END−

 

 

 



2011/12/24 21:33
From ヒロ
Sub Re:今

車だよ
さすがに道が混んでるよ
やっぱりクリスマスだね


  −END−


 

 


2011/12/24 21:35
From 大ちゃん
Sub Re:Re:今

ゴメン!!
運転中だったんだね
邪魔してごめんね


  −END−

 

 

 

 



今年最後のネオエイジの放送が終わった。クリスマスイブもあとちょっとで終わり。なんにもなかった今年のクリスマス。僕に同情したのか新ちゃん達が食事に誘ってくれた。僕の大好きなお肉。アベちゃんが豪快に笑って鳥肉じゃなくたって肉は肉でしょなんて言ってた。その気持ちが嬉しかった。
そんな新ちゃん達もブランケットちゃんとパウダーちゃんを連れてさっき帰っていった。家にはジョンとまた2人。

お仕事でもしようかな。クリスマスだって普通の日。やることはたくさんあるし、仕事がはまっちゃえば日にちも気にならなくなる。そう思った時だった。


ピンポーン


誰だろう、こんな時間に。
僕はインターフォンのモニターを覗くと、

「・・・ヒロ?」

信じられない人がそこに立っている。僕は慌てて玄関へと向かった。

 

 

 

 

「どうして・・・?」

驚いた顔をした大ちゃんがオレの目の前で固まってる。やっぱりね。一人で淋しそうにしてるくせにどうして連絡してこないかな。
確かにさっきのメールはちょっと意地悪だったかなって思ったけど、車に乗ってるってだけでその後メールしてこないって全く。
結局オレの方がこうして手を差し伸べちゃうのがいけないのかもしれないけど、クリスマスなんだよ?解ってるのかな。二人ともがオフのクリスマスなんてこの先あるかどうか解らないのに、どうしてこういう時に素直にならないのかオレには解らない。どうしてそんなに頑ななんだよ。

「どうして・・・?」

「それはこっちのセリフ。とりあえず入れてくれるの?くれないの?」

「あ、ゴメン。入って。」

呪縛から溶けたみたいにぎこちなく場所を譲った大ちゃんの向こうからジョンがかけてくる。

「おぉ、ジョン。誕生日おめでとう。」

足元にやってきたジョンを撫でてやるとジョンは嬉しそうに擦り寄ってきて。大ちゃんもこのくらい素直ならね、なんて心の中で思っていると後ろで息をつくのが聞こえた。

「そっか、ジョンの誕生日、お祝いに来てくれたんだ。ありがと。」

まったく的はずれな・・・。
オレはそのまま靴を脱いでジョンと一緒にリビングへと向かった。その後ろを大ちゃんがついてくる。

「ジョン。」

ソファに座ってジョンを呼ぶといつものように飛び乗ってくる。

「これ、ジョンにプレゼント。何がいいか解らなかったから、犬って言ったらこれかなって思って。」

オレは買ってきた犬用の骨を大ちゃんに渡した。すると大ちゃんはそれを嬉しそうに受け取ってジョンに見せた。

「よかったね、ジョン。歌のお兄さんがジョン君にだって。」

早速その骨を出してみせるとジョンはソファから降りて大ちゃんの手にある骨に近寄った。骨を置いてやるとジョンはガシガシと齧り始めてその様子を大ちゃんは優しい目で見ている。

「大ちゃん。」

そっと呼ぶと視線をこっちに向けて伺うような顔をしてくる。

「今日は?何の予定もなかったの?」

ちょっと意地悪な質問をしてみる。
すると大ちゃんは小さくうなづいた。

「オレも。なんにも予定なかった。」

「・・・そうなんだ。」

「大ちゃんからメール来るかなって思ってたけど、来なかったし。きっと忙しくしてるのかなって。」

「ヒロの方こそ。だってクリスマスでしょ?忙しいと思って。」

「何で?」

「だってそれは・・・ヒロだもん。」

そう言って大ちゃんは口をつぐむ。だからさ、その理屈はどこから来るの?大ちゃんの思考はまったくもって謎。

「ねぇ、どうしてオレがここに来たか解る?」

「ジョンの誕生日でしょ?」

「本気でそう思ってるの?」

大ちゃんは黙ったまま答えない。

「大ちゃん、今日はなんの日?」

「クリスマスイブ・・・でもジョンの誕生日。」

「それは昨日のこと。もう今日は25日。ただのクリスマスだよ。」

「え・・・?」

「オレは・・・大ちゃんに会いにきたんだけど?」

 

 

 

 


 

信じられないことをヒロが言ってる。
だって嘘でしょ?僕に会いに来たって・・・そんなの。何の約束もしてないのに、クリスマスに僕なんかに会いに来るはずなんてない。ヒロが僕のところに来るなんて・・・。
だからインターフォンのモニターに映ってるヒロを見た時信じられなくてびっくりしたし、でもそれがジョンの誕生日だからだって解ってやっぱりって思った。だって僕にはヒロが会いに来る理由なんてないから。
いくら優しいヒロだってこういう時に一緒にいる人はいるはず。それは僕じゃないことも解ってる。それなのに・・・。

「どういう事・・・?」

「大ちゃんはさ、クリスマスに会いたい人はいないの?」

会いたい人・・・。そんなのヒロだけ。でもそれは言えない。言ったら・・・。
このままがいい。このまま何も起こらなくていいからヒロのそばにいたいだけ。だからクリスマスに会いたいなんて言わないし、会いに来てくれなくていい。それなのに・・・。

「オレと大ちゃんって何なんだろうね。」

「ヒロ・・・。」

「大ちゃんはオレの事、どう思ってるの?」

どう思ってる・・・?聞かないで。そんな事、聞かないでよ、ヒロ。答えられるはずがない。だって僕がこの気持ちを言ったら、ヒロはきっと答えを出しちゃうでしょ?僕は・・・聞きたくないよ。
どうしてこのままじゃダメなの?ヒロに拒絶されたら僕は・・・。

「ねぇ、一度ちゃんと聞いてみたかったんだ。大ちゃんはオレのこと、どう思ってるの?」

 

 

 

 

 

 

大ちゃんが困った顔をしてる。解ってて聞いた。
大ちゃんがはっきりさせたくないって思ってることは解ってる。きっとオレにはっきりと恋愛感情を持てないって言われるのが怖くて曖昧なままにしておきたいんだろう。
だけど、何でそう思っちゃうのかな。オレが大ちゃんをそういうふうに見てないって何時言った?確かにオレは大ちゃんみたいに純粋な気持ちで大ちゃんの事を好きだとは言えないよ。オレのはただの独占欲。大ちゃんがオレ以外の人と楽しそうにしてるのを聞くとイラッとする。子供じみた感情だって事も解ってる。だけどこんな気持ちを抱いてるって事はそういうことだと思うんだよね。

オレだって大ちゃんを好きなんだって事。

ただその好きの種類が違うのが問題な訳で・・・。

正直、大ちゃんのようなストイックな愛情を求められたらオレはきっと根を上げる。だからこのままがいいっていう大ちゃんの気持ちも解らなくもない。この関係はオレにとっても自由だし、きっと大ちゃんにとっても逃げ場があるに違いない。だけどさ、逃げすぎなんだよ、大ちゃん。それがオレには気に入らない。
イベントの時に一緒にいなきゃ恋人じゃないとは言わないけど、せっかく二人ともが時間が空いてるのに、どうして別々に過ごさなきゃいけないんだよ。そういう時くらい甘えてくれたっていいじゃないか。
そもそも甘えるってことを大ちゃんはまったくしてくれない。それはそれで淋しいんだよね、男として。
っていうか大ちゃんだって男だから、なのかもしれないけど。

意地悪してるのも解ってる。オレから誘えばよかったっていうのも解ってる。でも、オレ達、そろそろ次へ進んでもいいよね?出会ってから20年、付き合い始めたのはいつになるのか解らないけど、少なくともそういう関係を作ってから10年以上はすぎてるよね?それなのにオレの気持ちをそんなふうに思ってる大ちゃんに、オレは腹を立ててるんだって事、鈍感な大ちゃんには解らないのかもね。もっと自信を持ってもいいのに。他の事には自信持ちすぎなくらい持ってるのにさ。

 

 

 

 

ヒロの目が僕をじっと見てる。

答えなきゃ・・・いけないの・・・?

僕は視線をずらすことも出来ずにただ黙っていた。

「ねぇ、聞かせてよ。大ちゃんはオレのこと、どう思ってるのか。正直に話していいんだよ。」

「それは・・・。」

正直に話したら、きっとヒロとの関係は変わってしまう。ずっとここまで築き上げて来たものが僕の一言で・・・。
そう思ったら怖くて何も言えなくなる。僕の気持ちが解ってるくせにどうしてそんな事を言わせようとするのか。いままで何となく曖昧なままで過ごしてきたのに。
それともはっきりさせたいのには理由があるから?
もう僕とは・・・そういう事・・・?そういうことなの?ヒロ・・・。
僕は恐る恐るその目を伏せた。するとヒロが待ちくたびれたのかため息をついて言った。

「大ちゃんはオレの事、好きだよね。」

その一言に顔が熱くなった。やっぱり気付いてたんだ。当然といえば当然だけど、こうしてはっきり口に出されるとどうしていいか解らなくなる。

「オレも大ちゃんの事は好きだよ。」

「嘘!!」

「なんで?」

「だって!そんなはずない・・・。」

ヒロが僕を好きなんて・・・。嫌われてないとは思うけど、こんなに簡単に好きって言われるなんて思えない。だってヒロは・・・

「僕・・・男だもん・・・。」

 

 

 

 

 


 

「僕・・・男だもん・・・。」

あぁ、そうか。やっと解ったよ。大ちゃんがはっきりさせたがらない理由。そんな事にこだわってたんだ。
どんなに健気なんだって話だよ。欲しいものは積極的に手に入れて来た大ちゃんがオレとの関係だけは躊躇する理由。

男同士だって事。

多分大ちゃんはそんな事もすべて解っていてオレの事を好きになったんだろうけど、オレが好きになったのは大ちゃんのひたむきな視線に絆されてだったから。その事をずっと大ちゃんは負い目に感じてきたんだろうね。だけどさ、始まりがどうであれ、関係ないでしょ?絆されただけで男抱けるかっていうの。オレは大ちゃんだから抱きたいって思ったんだし、その気持ちが間違いじゃないって解ったからその後だって・・・。
それなのに、何でこの人はそう言う肝心なとこ勘違いしてるかな。今までずっとそんなふうに思ってたなんて軽くショックだよ。

「大ちゃん。」

オレは大ちゃんを自分の方へ来るように呼んだ。すると大ちゃんは少し迷った後、すごすごとオレの前に立った。

「大ちゃん。」

腕を軽く引いて腕の中に閉じ込めようとしたが、大ちゃんはそれを抗って逃げた。

「大ちゃん?」

「どうして・・・ヒロはズルイ。」

唇を噛みしめてオレを見つめる大ちゃんは今にも泣き出しそうな顔をして。
何がズルイっていうんだろう?オレは何もしてないのに。

「大ちゃん・・・?」

「ズルイよ、ヒロ。そうやって・・・僕の気持ち知ってるからって・・・。そういう事したら全部誤魔化せると思ってる。」

「はぁ?」

「どうせ僕はヒロの言う事やする事にいちいちドキドキしてるよ!!でも、だからって、それを・・・!!」

「大ちゃん?」

「ヒロはいろんな事に慣れてて、なんでもスマートにこなして・・・悔しい。」

真っ赤になって必死に叫ぶ大ちゃんが可愛くて、オレは思わず笑った。

「そうやっていつも笑って僕の事!ヒロはズルイ!ズルイよ!!」

それはオレが思っていた事とは全然違う答えだったけど、きっとこれが紛れもない大ちゃんの本音。やっとちょっとだけ聞けた、大ちゃんの本心。

「大ちゃん、こっちおいで。」

「やだ。」

プイッと横を向く大ちゃんを捕まえる。

「オレはズルイ男だからね。欲しいと思ったものは全部欲しいんだ。」

大ちゃんを腕の中に閉じ込めると今度は怯えたようにおとなしくしている。その頬にそっとキスを落とした。

「大ちゃんがオレの気持ち、疑いたいなら疑ってもいいよ。オレ達の関係に答えを出したくないなら出さなくてもいい。今はね。でも、」

オレは大ちゃんの唇をそっとふさぐ。

「このキスは嘘じゃない。」

大ちゃんの目が見開かれる。

「今夜くらいは騙されてみなよ。クリスマスなんだから。」

「ヒロ・・・。」

ほんのり赤くなる大ちゃんの頬。その頬に再びキスを落とす。

「大好きだよ、大ちゃん。」

何度も繰り返すキス。腕の中で大ちゃんが震えるように身悶えする。

「や・・・やだ・・・やめて、ヒロ。」

「ホントにやめていい?」

オレは抱きしめていた腕の力を解いて大ちゃんと視線を合わせる。
無言の時間に大ちゃんが小さく答えた。

「やだ・・・やめないで。」

消え入りそうな小さな声で呟いて腕の中へ落ちてきた大ちゃんをオレは再び抱きしめる。臆病すぎる愛しい人は耳まで真っ赤にしてオレの腕にしがみついた。

大丈夫、クリスマスの魔法が溶けても、この魔法は溶けたりはしないから・・・。

クリスマスの夜は恋人達の時間・・・。


Merry X'mas
Love to you・・・