「13・・・14・・・15・・・。」

きゅきゅきゅ〜〜て音をさせながらカレンダーにバッテンを書き加えていく。

「あれ??今日ってもう16日!?はやっっっ!!!」

バッテンのついたカレンダーを見て途端に焦る。
もろもろの仕事の締め切りが書き加えられたカレンダー。締め切りまでの
日数は・・・うへ〜〜・・・もう!?
そうして初めて気づく。

「ヤバ・・・来週じゃん、クリスマス・・・。」

仕事の忙しさにすっかり忘れていた・・・。ってか、いつもはうるさいあの男が一言も口に出さないから忘れてた。
忘れてた・・・って言うのとはちょっと違うのかな。
部活のアレンジしたり、25日のイベントのアレンジしたりと、クリスマスってことは頭にあった。でもそれが全くプライベートと結びつかなかったんだから僕もどうかしてる。さんざんイルミネーションを撮っておきながらね・・・。

「早いなぁ・・・もう今年も終わりじゃん。」

そう言えば自分のラジオでも今年の10大ニュースなんてやってるんだっけ・・・。
年末じゃん。完全なる時差ぼけ?時差ぼけって言わないのかな?よく解んないけど。

「今年、どうするつもりなんだろうな〜アイツは。」

とは言え、クリスマスにディナーショーやるって言ってたから、多分・・・ね。期待なんかしてないけど、全然。

「そっか・・・今年、僕、ディナーショーがないからだ!!」

いつもはこの時期、ディナーショーのピアノの稽古に追われてて、それが終わるとクリスマスだ〜〜なんて思ってたから、それをしなくていい今年は実感がないのかも。いや〜習慣って怖いね〜。

「クリスマス、か・・・。」

僕達には縁遠い、仕事としてはとっても需要なイベントだけど、プライベートなんて全くない淋しいクリスマス。毎年ね。
それでもあのイベント好きな男はちゃ〜んと覚えててそれとはなしに何となくデートみたいなことしてくれたりするんだけど、今年は一向にその気配がない。っていうか、今気づいた僕も僕だけど。


しょうがないか・・・舞台の稽古にクリスマスのイベント、さらにお正月のイベントもあるしね。さすがにヒロでもそこにクリスマスの計画を差し込んでくるのは難しいか。

本人、アメリカ型だとか何とか言ってるけど、プライベートの時間もきっちり取りたい男だから、こういうイベントは外さないんだけど・・・。
それとも、今年は僕以外の誰かがいるって言うわけ!?あんなにじゃれ付いてきといて、そんな事だったら許しはしないけど!!

でも、イベントになるとそういう気分が急に高まってくるって事も解ってるし、気持ちじゃなく、形として可愛い女の子とスウィートなディナーを・・・なんて考えてるのかも知れないけど。


黙って僕にしとけっていうんだよ、このバカヒロ!!


イベントの熱に浮かされて女の子作っても、結局めんどくさくなるんだからさ。それを一体何回繰り返してると思ってるの?
僕なら面倒なことは言わないし、ヒロの都合のいい時だけ可愛い女の子の代わりくらいいくらでもしてあげるのに。なんて言ったって天使だからね〜ぼ・く・は!!

・・・って、この歳で、このなりで天使なんて言うのもチャンチャラおかしいけど。
ま、ヒロがそう言ってくれるんだから、黙って天使の振りくらいしてあげるけどさ。


って言うかさ、一体いつまで僕のこと天使だなんて言ってくれるんだろうね〜あの男は。
可愛らしいとかさ、平気で言うけど、もういいオヤジだけど?
それともヒロの中では本当の僕とは違った美化した僕が未だに存在してたりするわけ?

その辺のこと、聞いてみたい気はするんだけど、ヒロにとって『可愛い』のポジションを失いたいわけじゃないから変な藪はつつかないに限る。こうなったら50過ぎても80過ぎのおじいちゃんになっても『可愛い』って言わせようじゃないのさ。
年々若返ってるようなヒロに比べると、僕なんてほんとに・・・。


タバコやめたら少しは違うのかな?
規則正しい生活したら変わってくるのかな?


あぁ〜ダメだ!!そんな事で止められるならとっくに止めてる。そんな事したら返ってストレスがたまって仕方がない。

いいの、僕は僕だから!!あのカッコいいヒロにいつまでも『可愛い』って言わせて見せるんだから。

「はぁ・・・クリスマスねぇ・・・。ま、僕も時間ないし・・・いっかなぁ・・・。」

ベルのイラストが入ったクリスマスの日付を見つめて、僕は小さくため息をついた。