10/12/11 21:42
From ヒロ
Sub 終った(^o^)/
大ちゃんお待たせ!!!!
打ち合わせ終わったよ!!!!!(^o^)/
今から迎えに行くね!!!!!!!!
−END−
10/12/11 22:33
From ヒロ
Sub お待たせいたしました
お迎えに上がりました!!姫!!!!!!(^o^)/
−END−
「オイ!!姫ってなんだよ!!」
ヒロからのメールにドアを開けると携帯片手にニコニコ笑ってる奴がいた。
「へへへ。さ!姫!!どこぞなりとも!!」
中世の騎士みたいに膝を折って僕に手を差し出したナイト気取りの奴の前でバタンとドアを閉めてやると、途端に情けない声が聞こえた。
「えぇ〜〜大ちゃ〜〜ん。開けてよ〜〜〜。」
情けない声の主はドアをトントン叩いて僕を呼ぶ。その様があまりにも情けなさ過ぎて笑える。
そんなヒロを放っておいて、上着を取りに戻ると、部屋の中ではアニーとジョンが聞きなれた声に耳を立てていた。
「ん。歌のお兄さんだよ。久しぶりでしょ?ちょっとお出かけしてくるから2人ともいい子にしてるんだよ〜。」
頭を撫でてやってチュッとキスを送る。そのまま僕はもう一匹のうるさいワンコの方へと向かった。
「近所迷惑です!!」
ドアを開けてそう言ってやるとニパッと笑ったヒロが僕を見てさらに目を見開いた。
「大ちゃん、それ・・・。」
「おぅ。そういう時期になったから。」
玄関に座り込んでブーツを履きながら答える。
「オレがあげたやつだよね?ね?ね?」
「さぁ〜?どうだったかなぁ〜。」
「うそ!オレがあげたやつでしょ?大ちゃんに良く似合ってるもん。」
ブーツを履き終え立ち上がるとヒロの視線とぶつかる。
「大ちゃん、可愛いね。」
「当然。だってヒロが僕の為に選んでくれたんでしょ?」
「うん!!!そうだよ!!」
少し照れながら、それでも満面の笑みで頷いたヒロは僕がドアに向かうと慌ててドアを開けた。
「で?どこに行くの?」
ドアが開くとさすがに少し寒い。すくめた僕の肩にヒロの手がきゅっと回った。
「寒い?」
「ちょっとね。今まで部屋の中にいたから。」
「じゃ、急ごうね。」
そう言ってヒロはポケットから車のキーを取り出しロックを解除した。
「え?ヒロの車?寒いじゃん。」
「大丈夫。ちゃんと屋根つけたから!!」
口を尖らせながら言うヒロは僕を促して通りに玄関前に横付けされていた車のドアを開いた。
「助手席久しぶり。」
「あぁ!そっか!最近は大ちゃん、ずっと運転席だもんね。」
笑いながら運転席に向かったヒロは慣れた手つきで乗り込むとすぐにエンジンをふかした。
「じゃあ、美味しいもの食べにね。」
そう言って行き先も告げぬまま、ヒロは車を発進させた。
数分車を走らせてヒロが連れてきてくれたのは、ヒロの家の近く。最近はまってる創作料理を出してくれるところみたい。
一見洒落たマンションの入り口みたいなそこは、雰囲気も落ち着いててなんかいい感じ。
ヒロ、こう言うとこ好きだもんね〜。
洒落た作りのこじんまりとした店内は数席のカウンターと、個室と言うわけではないけれど、それなりに仕切られたスペースがいくつかあるだけの隠れ家的なお店だった。
ヒロは店員さんと和やかに話し、その店員さんが案内してくれたのは、一応気を使ってくれたのか奥まった席だった。
「大ちゃん奥にいいよ。」
奥のシートの席を勧めてくれて、ヒロはようやく落ち着いたかのように僕を見つめた。
「なに?」
「いや〜大ちゃんだな〜って思って。」
「・・・変なの。僕以外の誰がよかったんですか?貴水さん。」
「違うよ〜そういうんじゃなくて!!」
わざと言った言葉に反論するヒロがおかしくて思わず吹き出す。
「も〜大ちゃん、絶対オレの事虐めて楽しんでるよね。」
「いいじゃん。虐められるの好きなんでしょ〜?ドMな貴水さん。」
「だ〜か〜ら〜オレはいつからドMなわけぇ?」
うなだれるヒロに笑っていると店員さんがドリンクを持ってきた。
「大ちゃん、とりあえずビールでしょ?」
いつの間に注文しててくれたのか、今日のヒロは手際がいい。
「あれ?ヒロは?あ!車か!」
ヒロの前に運ばれたウーロン茶を見て何となく申し訳ない気分になる。
「いいよいいよ。オレは今日は大ちゃんの運転手だし。この後セリフも覚えないといけないからね。」
「じゃあ、今日、止めとけば良かったね。」
「え〜!そういう事言わないでよ〜。オレ、今日の楽しみにしてたんだからさ〜。」
「あはは、ゴメンゴメン、嘘。じゃ、遠慮なくいただきます。」
「うん。」
おつかれ〜とグラスを合わせて僕らは久しぶりの2人っきりの食事を楽しんだ。
「もう、帰らなくちゃだよね・・・。」
食事を終えて車に乗り込んでから、それとなく聞いてみる。
大ちゃんの好きなご飯には程遠かったかもしれないけど、ちゃんと野菜も食べて欲しくてこのお店にした。野菜のせいろ蒸しがすっごいおいしいから。
ゴマだれとおろしポン酢で食べれるし、ちょっとしゃぶしゃぶぽいからいいかな〜なんて思ったんだけど、大ちゃん、「肉は?」なんて言うんだもん。肉は今度・・・って言ったけど、ちゃんと野菜も食べてよね、大ちゃん。オレ心配なんだよ。
それでもちゃんと食べてくれた大ちゃんは、もうおなかいっぱいって、最後には笑って言ってくれた。大ちゃんもこのお店が気に入ってくれたみたいで、よかった。
ご飯を食べながらお互いのことを話したり、大ちゃんもオレの稽古のこととかちょっと気にしてて、お正月の予定を組んだ事。
でもそれはオレだって楽しみだし、お正月から大ちゃんに会える口実があるのはやっぱり嬉しいんだけどね。
そっちのリハもしなくちゃねって話をしたり、結局半分くらい打ち合わせみたいになっちゃったのは、しょうがないか。
そんな食事を終えて、車に戻ってきて、もうこれで一緒にいる理由がなくなっちゃったみたいな気がして、軽い口調で聞いてみた。もうちょっとでいいから一緒にいたかったし。
「ヒロも明日があるでしょ?僕もまだやらなきゃならない作業あるしね〜。」
「そっか・・・。」
しょんぼりして、それでも大ちゃんの言う事は正しくて、オレは大ちゃんにばれないように小さくため息をついた。
「ね、ヒロの家に向かってよ。」
「え・・・?」
「ヒロの家から少し散歩して帰る。ちょっとさすがに食べ過ぎた。」
一瞬飛び上がるほど嬉しかったけど、そうか・・・やっぱり帰っちゃうよね・・・。
「家に・・・泊まってったり、しない・・・?」
僅かな望みをかけて聞いてみる。
「ん、今日はダメ。だってジョン達そのままにしてきちゃったし、それにほんとに仕事が溜まってるんだよね。」
「そ・・か。」
望みの欠片も繋げなくってオレはしょんぼりしたまま車を走らせた。
「落ち込むなって。全く。じゃあ聞くけど、今日ちょこっといるのと、1日時間空けるのと、どっちがいい?」
究極の選択を迫られて、オレは黙って頷くしかなかった。
だって、1日時間空けるって・・・そういうことでしょ?
大ちゃんも一緒にいたいって気持ちなんだって事。そういう意味でも・・・。だったら、オレは我慢するしかないわけで・・・。
今日だってきっと大変なのに時間作ってくれたし、その事だけでもヨシとしないと・・・ダメだよなぁ・・・。
オレの表情を見た大ちゃんはクスッと笑った。
「じゃあ、大ちゃん家まで送るよ。」
「いいの。ヒロん家に行って。で、そこから送って。」
「?」
「散歩。する時間くらいあるだろ。」
チラッとこっちを見ながら言う大ちゃんはほんとに確信犯で・・・夜中のデートに誘ってくれた。
「大ちゃん。」
「さ。早く!ヒロの家まで。」
「ん!!」
オレは気分も軽くハンドルを握った。
「はぁ〜〜やっぱり寒いね〜〜。」
そう言いながら前を歩く大ちゃんを追いかける。
「そんな薄着なんだもん。風邪ひくって。」
「え?ダウンだよ、だって。」
「でも腕のところはないじゃん。」
オレのあげたプレゼント。ほんとに大事そうに着てくれてる。
さっき聞いたけど、昨日のなんかの講義に着て行ったって。大事な時に何故か選んじゃうんだよね〜と悔しそうに言ってたけど、オレとしてはすっごく嬉しい。
食事後の腹ごなしもかねて・・・って事で歩いて30分くらいの距離を2人でプラプラと歩く。帰りは走って帰ればオレも調度いいトレーニングになるし。そう言って靴をスニーカーに履き替えてる間に大ちゃんは先に歩き出してて。やっと追いついたオレに白い息を吐き出しながら笑った。
「あ!!見てみて!!!シリウス発見!!」
星を指差して大ちゃんが言う。
「シリウス?」
「そう!!あのね、光ってるやつ。」
「え?どこどこ?」
歩きながら一緒に空を見上げて、大ちゃんの言うシリウスを探す。
閑静な住宅街。この時間は人通りもそんなに多くない。こうして2人で歩いてても誰にも気付かれないくらいには。
大ちゃんは必死にオレにその星のありかを教えてくれる。
この夏、はやぶさが帰ってくるって言うんで、それ以来天体にも興味を持ち始めた大ちゃんは、最近では星を見るのも好きみたい。デジイチで星の軌道を撮りたいなんて言ってた。あの理科の教科書に載ってたようなやつか・・・って認識しかオレにはないんだけど。
大ちゃんの興味の範疇は広すぎて、オレにはとってもついていけない。でもそんな大ちゃんがいろいろ語ってくれるのがオレは物凄く好きなんだけどね。
「あ、あれ?」
「そう!!解る?」
「一番光ってるやつ?」
「そうそう!!その上にオリオン座があるでしょ?」
「オリオン座?あぁ〜〜やったな〜〜〜。で、どれがそれ?」
「あの三つ並んでる星と、あそことあそこまで。」
「へ〜〜〜。大ちゃん詳しいね〜〜。ねぇねぇWのは?」
「それはカシオペア座。」
2人して星を見上げて他愛のない会話を交わす、この瞬間がオレは一番好きだ。大ちゃんが隣で笑ってる。それだけでなんだかあったかい気分になる。
「ねぇ、大ちゃん。」
「ん?」
「オレ、大ちゃん好きだよ。」
突然、なんだか言いたくなった。すると大ちゃんは真っ赤になって、
「バッ・・・急に何言ってんの!!」
プイッと顔を背けて早足で歩き出した。こんな大ちゃんも可愛い。
「何って、好きだな〜って思ったからさ。」
「そ・・・!!も〜〜ヒロの思考にはついて行けない!!」
「ちょ、待ってよ!!」
オレはズンズンと一人で歩く大ちゃんの手を捕まえた。その手をしっかりと握る。
「一緒に帰ろうよ。ね?」
掴んだ手をそのままきゅっと恋人繋ぎに繋ぎ代える。オレより一回り小さい大ちゃんの手。この手がオレに歌う場所を与えてくれた。
大ちゃんは繋ぎかえられた手をじっと見つめて
「・・・勝手にしろ。」
ボソッと呟く。俯いた耳を真っ赤にして。
「うん。勝手にする。」
そういうと大ちゃんの手を繋いだ手ごとオレのコートのポケットへと突っ込んだ。
「ちょ、ヒロ!?」
「へへへ。あったかいでしょ?」
大ちゃんがジロッとオレを睨む。
「風邪ひかないように。」
ポケットの中できゅっと手を握り笑って言う。
「・・・クソ!も〜勝手にしろっっ!!」
プッと口を尖らせた大ちゃんはそのまま体当たりするようにオレの肩に頭を預けた。
「あったかいね。」
「・・・まぁね。」
寄り添って歩く夜道はなんだかとてもあたたかい。
ほんの30分足らずの家までの帰り道、オレ達はくすぐったいような気分で星を見上げて歩いた。