ん・・・あ・・・?

ヤバイ・・・2時だ・・・。

 

なんとなく目を覚ますともうお昼を既に過ぎていた。
ま、しょうがない、寝たのが9時過ぎてたしな・・・。


昨日はヒロとミーティングして、ご飯食べに行って、ホントはそのままヒロをお持ち帰りしたい気分だったけど、レコーディングの予定に仕方なく諦めて・・・。
ホントは食事なんて行ってる暇もなかったんだけど、お持ち帰りできないんだから、そこは譲れないって目で周りを黙らせて・・・。
あぁ、ホント僕って売れっ子だから困る。恋人との時間さえも自由に取れないんだからさ〜。

ま、こういう水物商売、売れっ子でなくっちゃ困るけど。それじゃなくても養わなきゃならないダンナがいるからね〜僕の場合。

根っからのお坊ちゃんだから、そういう事に疎い僕の恋人。大事に大事に育てられて来たんだな〜ってつくづく思う。
あの自由奔放な部分は羨ましいけど、たまに腹が立つ時もなくはない。
お前、遊んでないで働け!!って言ってやりたいけど、そんな事言ったら途端に萎縮して手足をもがれたみたいになる奴だって事も充分知ってる。だからそんなへまはしない。



いいの、その分僕が頑張ればいいんだから。

ヒロとの生活を守るためなら僕はどんな才能の切り売りだってしてみせる。
そのくらいの覚悟がなくちゃ、あの男とこんなに長く続いたりはしない。
だけどなぁ〜、その切り売りをしてる時間のせいで一緒にいられないなんて、本末転倒だよ、これじゃあ。

朝一からどんよりした気分を引き摺って、寝癖でパサついた髪をガシガシと撫でつけていると、携帯に着信ランプ。
あ、ヒロからメールだ。

 

            

 

 


10/12/01 10:18
From ヒロ
Sub おはよう(^o^)/

大ちゃん起きた?
昨日はオツカレサマ

もしかしてさ、そっちにニット帽忘れてない?
あったら置いといて。
帰ってきたらないんだよね(~_~;)
ヨロシク!!!!!(^o^)/


  −END-

 

 

                 

 




ニット帽?
そう言えば来た時被ってたような・・・。

エアコンの電源を入れてベッドから起きる。ペタペタと冷えた空気の中をリビングルームへと向かうと、愛犬たちが僕の気配に気付いて顔をあげた。

「おはよう、アニー、ジョン。」

って挨拶したジョンの足元・・・。

 

 

                   

 



10/12/01 14:29
From 大ちゃん
Sub これの事ですか?貴水さん?

ジョンの枕になってたぉ。
しっかりジョン汁つけられてたぉ(;一_一)


 −END−

 

                     

 

 

 

 

 

 

10/12/01 23:52
From ヒロ
Sub 大ちゃ〜ん

いる?

 −END−

 

 

               

 

 

♪♪♪〜〜〜


作業中になりだす着信音
この音は、ヒロだ。どーした?

いる?っていますけど?

 

               

 



10/12/01/ 23:56
From 大ちゃん
Sub いるよ

何?どーしたの(@_@)
入ってくれば

 −END−

 

                   

 

 


程なく開くドア。

「帽子、取りに来ちゃった。」

ニカッと照れくさそうに笑うヒロの魂胆なんて透けて見えてる。
ハイハイ、今日は大変だったんだね。そーいや、今日から今度の舞台の稽古が始まるって言ってたっけ?

って事は今まで飲んできたな。どうせ帰るのがめんどくさくなったか、テンション上がってヘラヘラとやって来たに違いない。さて、今日はどっちだ?

「お疲れ、ヒロ。」

とりあえず普通に労ってみる。

「だぁ〜いちゃ〜〜ん。」

グタ〜っとソファにへたり込んで、勝手に僕の膝を枕に軽い泣きまね。

「オレ、脳ミソパンクしちゃうよ〜。」

どうやら今度の舞台は大変みたいだ。
僕もヒロに勧められてチラッと読んで見始めたけど、いろいろ忙しくてなかなか進んでない。
確か冷徹な役だって言ってなかったっけ?
ヒロに冷徹な役ねぇ〜。この天然に勤まるとは到底思えないけど、ま、そんな事は口が裂けても言わない。
なるほど、今日はちょっぴり自信喪失な訳ね。しょうがない男だ。

「どうしたのぉ?ヒロ。お稽古大変だったの?」

そう水を向けてやると、もうさ〜なんて話し出す。
こういう時って全部吐き出したらちょっと楽になったりするんだよね。だからいいよ、好きなだけ吐き出していきなよ。
僕は黙って適当に相槌を打ちながら話を半分くらいの意識で聞く。半分ではこの後の作業の事を考えながら。あぁ〜あそこの音、もうちょっと変えたいんだよな〜。後で入れ替えてみよう、何て事を考えてると

「ちょっと大ちゃん、聞いてる!?」

突然ヒロの怒る声。

「え?あ、うん。聞いてるよ。アイス・・・でしょ?ヒロ、僕のアイスみたいなんでしょ?」

「キルヒアイスっっっ!!!全然聞いてないじゃん!!!」

「聞いてるよぉ。手に入れるんでしょ?キル、ヒ?アイス。」

「手に入れるのは宇宙!!アイスなんか手に入れないよ!!」

ぷーっと膨れっ面で文句を言う。
あ〜も〜こういう時だけこっちの考えてる事に敏感なんだから。

「もーいい!!帰る!!!」

「え?ヒロ?」

ヒロはスタスタと部屋を出て行った。

 

 

 

 



12月1日(水) 晴れ

ヒロが突然やってきて、いきなり怒って帰って行った。
何しに来たんだ?あの男。
そう言えば、肝心の帽子、また忘れていった。
ま、いっか。ジョンのヨダレがついたこと今言ったら、余計に切れそうだし。
ホントあの男は短期だから困る。
もっと心を広く持たなきゃね〜。