やっぱり東京の方がちょっとは暖かい。可愛い子供達と散歩をしながらそんな事を思う。
しばらくいなかったから今日はワン3ズにサービス。
あっちの空気も捨てがたいけど、やっぱり僕はこの子達のいるここが一番好き。
心配してたアベちゃんはどうやら僕の旅行中に風邪をひいたみたい。
あんまりこの子達の事、構ってあげられなくてごめんねって言ってたけど・・・かえってその方がこの子達のためだったかも・・・なんて事は口が裂けても言えない。
久しぶりの僕との散歩に、この子達も嬉しそうなんて思うのは、もしかしたら僕の思い過ごしかな?また親バカって笑われそうだ。
アレ・・・?
あの人・・・。
いつもの散歩道、灯りのついたツリーの下にこの前の人。
この前と同じように柵に腰掛けて、なんだか考え事でもしてるのかな?
僕はリードを少し強めに引いて、ご機嫌で歩いている子供達を呼んだ。
「こっちおいで。」
なるべくその人から子供達を遠ざけるようにして歩いていく。
何してるんだろう。特に何もないこんな公園で。
まぁ、この辺りではちょっとしたイルミネーションスポットではあるけれど、普段は子供が走り回っているか、こうして犬の散歩で通る人がいるくらいだ。この時期だけ、思い出したように人が集まったりはするけれど、それでもそれには理由があってだ。コイビトとのデートコース・・・って言う。
あの人は見たところ一人だ。この前も一人だった。
誰かと待ち合わせをしているのかも知れないけど、その相手が現れたところを見てはいない。
まぁ、たった2回しか見かけてないんだから、僕の知らないところで待ち人が現れてるってこともあるけど・・・。
それにしてもこんな中途半端な時間に?普通の人は多分まだ仕事じゃないのかな?
僕には普通の人の生活は遠くなりすぎてこのくらいの時間がはたしてどういう時間なのかが解らないんだけど・・・。
塾帰りなのか数人の子供達が揃いの鞄を背負って公園の中を走り抜ける。
「あ!ワンちゃんだ!!」
一人の女の子が僕の子供達を見て走り寄って来る。
「ワンちゃ〜ん!」
声をかけて手をそっと出すとジョンが嬉しそうに跳ねた。
「おぉ!!」
女の子達はその様子にちょっとビックリしながらも楽しそうに笑う。
「触ってい〜い?」
利発そうな子が僕に聞く。
「うん。いいよ〜。」
そう笑って答えて一番落ち着きのないジョンを座らせる。それを待って女の子達が恐る恐る頭を撫でる。
子供にも慣れてるアルとアニーはおとなしく撫でられるままになっているけど、まだまだやんちゃなジョンはその手をペロペロと舐めようとして、その度に女の子達からきゃっきゃと声があがる。
「かわいいね〜〜。」
そう言いながら笑い合う女の子達の遠く向こう、こっちを見て固まってる彼が目に入って僕は聞いた。
「怖くないの?」
すると女の子達は口々に話し出した。
「うん!ゆうちゃん家のミルもかわいいよ〜。」
「ミル?」
「うん!ゆうのね、家で飼ってるの。」
「ミルね、クッキー食べるんだよ。」
どうやら、女の子の家にも大型犬がいるらしくその犬で慣れてるらしい事が解った。
そうか・・・小さい頃から大きな犬に接していれば平気なのかも知れないな。そう言えば僕の実家でも犬を飼ってたっけ。
きっとあの人は大きな犬に接する機会がなかったからなのかも知れないななんてぼんやりと思っていた。
「じゃあね〜バイバイ〜。」
ひとしき遊んだ女の子達は手を振りながら来た時と同じようにきゃいきゃい言いながら走って行った。その背を何となく見送りながらふと遠くのあの人が目に入る。
・・・固まってる。
こんな距離にいるんだから警戒しなくても良さそうなのに、どうも気になるのか目の端で気にしているのが解る。
笑ってしまいそうな僕はそっと子供達に声をかけた。
「帰ろっか。」
背中にあの視線を感じながら僕は今日も遠くからツリーを眺めるだけで公園を後にした。