「はぁ〜・・・何かイマイチ掴めないんだよな〜〜。」

「何が?」

ため息をついた僕にアベちゃんが聞く。

「う・・・ん。セリフから歌に入るのに、これはアリかな〜とかさ。」

来年のミュージカルの楽曲を作っていた僕は、答えを求めるようにアベちゃんを見た。メロディラインに悩んでるんじゃない。ただ、芝居をしてるところから歌に入る瞬間のこのワンフレーズに悩む。

「ホラ、だってお芝居してるわけじゃない?ここって、きっと直前までかなり激しい感じだと思うんだよね、動きが。その流れの中で、いけるのかな〜とかさ。僕は役者じゃないから解んないんだよね。」

「あら、執事で役者デビューしたんじゃなかったの?」

ニヤリとアベちゃんが言う。

「からかわないでよ!!ったく。」

睨み返してタバコに火をつける。立ち上る紫煙を吐き出して、もう一度出だしを流してみる。メロディはね〜〜。ただこれを動いた後に歌うのは・・・う〜〜〜ん・・・。
思わず眉間に皺がよる。

「聞いてみればいいじゃないの。歌って踊れる役者に。」

「そんな知り合いいないよ。」

「いるでしょ。一人。バタバタ倒されながら歌った人が。」

「???・・・・ヒロか!!」

僕は見に行ったヒロの舞台を思い出す。飛び掛られて倒されて、それでも歌を歌ってたヒロ。アレにはビックリしたっけ。共演者の人にも普通はやらないですよって言われたとか、言ってたような気がするな。
って事は、アレは無しなのか???もしかしてヒロって特殊???
でも今回の舞台は結構そういう要素が多い気がするし・・・う〜〜〜ん・・・。

「唸ってないで聞きゃあいいでしょ?」

呆れ顔のアベちゃんに「だって・・・。」と言い返す。

「ホラ、一応こういうのって関係者以外は・・・っていうの?」

「何を今更!」

僕の言葉にアベちゃんが鼻で笑う。

「さんざん内容しゃべっといて、関係者以外もクソもあるかっちゅーの!!」

「しゃべってないよ!!」

「しゃべってたわよ!!」

即座に返されて、返答に困る。

「歌ってもらったらいいじゃないの。どうせあの男のことだから、ケロっと忘れるわよ。」

「そうかな・・・?」

「そうよ!!」

面倒臭そうに言うアベちゃんの言葉に、僕はおずおずと携帯を手に取った。

「じゃあ・・・。」

呼んでいいんだよね?今、アベちゃんが良いって言ったよね?
僕の責任じゃないも〜〜〜ん(笑)

「な〜〜によ、嬉しそうな顔しちゃって。」

「してないよ!!」

僕はヒロにメールを打った。







 

 

08/12/05 16:31
from ヒロ
Sub お願い<(_ _)>

おはよ!ヒロ(^・^)
今日ってどこか時間空いてる?
ちょっと聞きたい事と、頼みたい事があるんだけど・・・(^_^;)
遅くっても構わないから連絡ちょうだい(^o^)丿

  −END−

 

08/12/05 17:03
from 大ちゃん
Sub ゴメン!!!!!

ゴメン、大ちゃん!!!!!!!!
今日はね、これから事務所の忘年会なんだよ。
明日ならちょっと空くかも。
明日でも大丈夫?
もしかして急用?なにかあった?

  −END−




08/12/05 17:06
from 大ちゃん
Sub 大丈夫(^o^)丿

別にそんなに急いでるわけじゃないからいいよ。ちょっと意見が聞きたかっただけ(-_-メ)

事務所の忘年会って、もう?早くない\(◎o◎)/!
ネェネェ、ノーブラやっほーも来るの?\(゜ロ\)(/ロ゜)/
うみ〜〜ゆ〜〜きぃ〜〜も?!(>_<)!
いいな〜〜(@_@。

  ―END−



08/12/05 17:16
from ヒロ
Sub Re:大丈夫(^o^)丿

食いつきソコかよ(^-^)!!!!!!!!!!

さっきの、明日でよければ顔出すよ。
また連絡するね(^-^)!!!!!!!!!!!!
ノーブラやっほーに会ってくるよ!!!!!!!!!!

  −END−












メールを閉じてため息をついた。
はぁ〜・・・ヒロ来れないんだ。
忘年会じゃあ・・・仕方ないよね。
忘年会・・・か・・・。

「ねぇ、アベちゃん、ウチも忘年会する?」

傍らでタバコをふかしてるアベちゃんに聞いてみる。

「何よ、ヒロはどうしたの?」

「来れないんだって。忘年会。」

「それで・・・。」

アベちゃんがおいしそうにタバコを吸う。

「残念だったわね〜〜〜。」

ニヤニヤと笑いながらそう言う。

「ねぇ、忘年会、しない?」

ちょっとムッとしながら言うと、アベちゃんは短くなったタバコを揉み消して

「アンタの仕事が一段落しないと、そんな事やってる余裕はございません。スタッフの為を思うなら、さっさと仕事を片付けてくださ〜〜い。」

容赦のない畳み掛けに恨めしくなる。

「・・・解ってるよ。そんなに言わなくったって、いいじゃん!!」

「私は何も、仕事請けすぎとか、休みなさすぎとか言ってませんけどぉ〜。」

「充分言ってるよ!!アベちゃんのイジワル!!」

「あら、何かお気に触るような事、言いまして?」

「・・・クソ〜〜〜!!絶対忘年会やってやる!!アベちゃんもそのつもりでいてよね!!」

高らかに笑うアベちゃんを追い出して、マックの前に座りなおす。こうなったら意地でもあげてやる!!
それにしても・・・ヒロ、来れないんだ・・・。イベントの事もあるし、これから益々忙しくなっちゃうのにな・・・。
会いたかったな・・・あ〜ぁ・・・。

 

        20081205 END