<strawberry time>

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、またね!!」

 

 

「ばいばぁ〜〜い。」

 

 

にこやかに手を振って、その声がかかるのを待つ。

 

 

「ハイ!OKです!!」

 

 

「お疲れ様でした〜〜。」

 

 

まったりとした空気の中で行われるtalk aboutの収録が終わり、僕たちは帰路についた。

と言っても、そのままスタジオに直行。夏のツアーの打合せの為に僕の家、兼、スタジオに移動しただけだった。

 

それにしても今日の対決・・・。毎回毎回、回をおう毎に内容がどんどん危険な方へ行っているような気がする。

今日の対決はミックスジュース早飲み対決。ただのジュースならいくらでも飲みたいけど・・・今日のは・・・。

スタッフや見てる人は楽しいのかも知れないけど、僕たちは地獄を見た。

でも、今日に限って言えば、文句は言えない・・・。だって横山くんは普通に飲んでたし・・・。

あれでみんなも飲めないようなものなら抗議の一つや二つしても許されると思うけど、企画者がちゃんと飲める事を証明してくれちゃったら・・・もう、何も言えないよね。

 

 

僕は大好きな我が子達にただいまの挨拶をすると、ヒロの為に子供たちをお家に入れた。

だいぶ慣れてくれたとは言え、3匹もうろうろしているのはまだちょっと怖いみたい。

1対1なら平気になってきたんだけどね〜。

 

家の子達をお家に入れながら玄関で微妙に硬直してるヒロを見る。

 

 

それにしても・・・

 

よくもあんなところで人の事、実はエロエロなんて言ってくれたよね〜。

普通じゃないとか、ホントにありえないんだけど!

しかもその瞬間のヒロの顔!!

昨夜の事を思い出してるのが僕にだって解るくらいのニヤケ顔で。収録中じゃなかったらぶん殴ってやるところだったのに!!もう、許さないんだから!!

 

僕は収録中の事を思い出してプリプリした。

 

 

そうだ!!いい事、思いついちゃった!!

 

 

僕はウキウキしながらヒロのところへ戻った。

 

 

「お待たせヒロ。」

 

 

僕はソファに座ってるヒロにアイスティーを差し出して、わざとスペースの狭い方へ座る。

一瞬、アレ?って顔をしたヒロだけど、僕がアイスティーを飲み始めると気にならなくなったのかそのままグラスに口をつけた。

 

 

「昨日大ちゃんが言ってたラストの曲順の事だけどさ。」

 

 

アイスティーを一気飲みして、ヒロが口を開いた。僕は何も言わずにただ黙って聞いている。ちょっと俯き加減にわざとヒロと視線を合わせない。

 

 

「・・・と思うんだよね。で、一度合わさせて欲しいな〜なんて。って、聞いてる?大ちゃん。」

 

 

やっと僕のこの黙ったままの状態に気付いたのか、ヒロが僕の顔を伺うように覗き込む。僕は心の中で微笑みながら、さらに俯いて小さな声で言った。

 

 

「どぉしよ・・・ヒロぉ・・・。僕、へんなのぉ・・・。」

 

 

「大ちゃん?」

 

 

「なんか、苦しいの・・・。」

 

 

そう言ってわざと自分の胸を抑えてみたりする。

 

 

「大ちゃん!?どうしたの!?ちょ・・・大丈夫!?」

 

 

「ひろぉ・・・。」

 

 

僕は深く息を吐き出しながら、ヒロの胸へと寄りかかる。ヒロが僕をちゃんと抱きとめてくれるって知ってるから。

僕の期待通り、ヒロは僕を抱きしめてくれて、僕はそんなヒロの腕の中でわ〜い!なんて思ってたりする。もちろん顔には出さないように注意して。

 

 

「ねぇ、大丈夫?どっか痛いの?気持ち悪い?」

 

 

オロオロしてるヒロの姿がおかしくて、でも本気で心配してくれてるのが嬉しい。

僕はそんなヒロのドキドキしてる胸にシャツの上からちゅっとキスした。それなのに!!

 

 

「吐きそう?ね、大ちゃん。苦しいの?」

 

 

ちょっと!!何それ!!僕のちゅうを何だと思ってるのさ!!

もう頭にきた!!ゴメンって言ったって許してやらないんだから!!

 

僕はヒロに絶対気付かれるようにヒロの胸に頭を摺り寄せた。

 

 

「大ちゃん・・・?」

 

 

今度はゆっくり、ちゃんとヒロの胸にくちづける。そのままヒロの首に腕を回してヒロを見上げた。

 

 

「僕、変な気分なの。さっきのドリンクのせいかな・・・?ヒロは?変な気分じゃ、ない・・・?」

 

 

じっとヒロの目を見つめて、しかもわざと上目使いになるように言った。

 

 

「え・・・あ・・・あの・・・大ちゃ・・・ん・・・!?」

 

 

ドギマギしてるヒロが面白い!!

ヒロってこういうのホントダメなんだよね〜〜〜。

自分から仕掛ける時は平気なのに、僕からすると急に落ち着かなくなるみたい。やってるのは同じ事なのにさ。いつだって主導権を握っていたいんだから。

 

軽くパニックになってるヒロに僕は更なる追い討ちをかける。

 

 

「ねぇ、ヒロぉ・・・。」

 

 

ヒロの唇まで僅か5センチのギリギリのところで、熱い吐息を混ぜて名前を呼ぶ。

 

 

「・・・だ・・い・・・ちゃん・・・。」

 

 

ヒロの喉がゴクリと鳴る。

 

 

あはは、ヒロが迷ってる!!

僕から仕掛けたこの状況にどうしたらいいのか解らないヒロと、自分のペースでその先に進みたいヒロが言い争ってるのが見えるみたい。ホント、可愛いよね〜ヒロって。

 

 

僕はさらにヒロを苦しめるべく次なる手段に打って出た。

 

 

「苦しくてどうにかなっちゃいそうなの・・・どうしたらいい・・・?」

 

 

そう甘い声で囁きながら、首に回した手はそのままで僕はヒロに跨ってみせた。

 

 

「だい・・・ちゃ・・・。」

 

 

目を白黒させてるヒロ。

そんなヒロの思考能力を奪うように、僕はヒロの腰に密着させるように座ってる位置をずらした。

 

ホラ、身体は正直だよね。

ジーパン越しでもヒロが熱くなってるのが解る。

わざとらしく詰めていた息を吐き出して見せたりして。僕って悪いよね〜〜〜。

ヒロが躊躇いがちに僕の背中に手を回してくる。いつもだったら当たり前のように僕の事を抱きしめるのに、この躊躇い方がおかしいったらない。

ホント、こういうところが『ヘタレ』って言われちゃうんだよ。まぁ、僕はそんな『ヘタレ』なヒロも好きなんだけど。

 

 

「あの・・・大ちゃん・・・?これって・・・その・・・。」

 

 

何をいちいち確認取ってるの?も〜おかしすぎるよ、ヒロ。

限界、もう限界。

 

僕はヒロの肩に顔を突っ伏して笑った。

 

 

「え・・・?大ちゃん???」

 

 

「も〜〜〜ヒロってば、おかしい!!」

 

 

急に笑い出した僕に、ヒロが固まる。

 

 

「ヒロ、ホントこういうのダメだよね〜。人からせまられるとどうしていいか解りません!!ってなるんだもん。も〜おかしくって。」

 

 

「えぇ〜〜・・・。」

 

 

「何?その手。何、確認とか取ってるの?僕、笑い堪えるのに必死だったんだから。」

 

 

ひとしきり笑いまくって、ヒロの頭をくしゃくしゃしたり、ぎゅって抱きついてみたりして、ヒロの顔を見ると、ようやく事態が飲み込めたヒロが脱力した表情をしていた。

 

 

「も〜〜〜大ちゃ〜〜〜ん。」

 

 

「実はエロエロなんて言った罰だよ〜〜〜。」

 

 

「え〜〜〜そんな事ぉ!?」

 

 

ヒロは大袈裟に驚いて見せて、僕をぎゅって抱きしめた。

 

 

「だって、ホントの事でしょ?」

 

 

ニヤリと鼻の下を伸ばしてヒロが言う。

 

 

「さっきの大ちゃん、すっごいエロエロだったよ。オレ、悩殺されまくりだったもん。」

 

 

「そう言う事は思ってても言わないの!!」

 

 

僕はヒロの頭を軽く小突く。

 

 

「えぇ〜〜〜だって、ホントにそう思ったんだもん。ホントはみんなに自慢したいくらいなのにさ。」

 

 

「自慢なんかするんじゃありません!!」

 

 

僕は慌ててヒロの口を塞いだ。

もう、何てこと言うんだよ、この人は!!

 

口を尖らせるヒロに僕はポソッと言った。

 

 

「そう言う事は2人だけの秘密でしょ。」

 

 

額をくっつけて、視線を外したまま言った僕の言葉に、ヒロは一瞬ビックリした後、満面の笑みで頷いた。

 

 

「うん!!」

 

 

ぎゅって抱きしめて、鼻先にキスをして、単純でヘタレな僕の愛しい人はご機嫌の笑顔を見せてくれる。

 

 

も〜〜〜敵わないな〜〜〜。こんな顔されちゃうんじゃ・・・また、サービスしちゃう?

オドオドしてるヒロも可愛いなんて思えちゃうから。

僕もヒロに負けず劣らず『ヘタレ』だなぁ〜。

でも、まぁ、2人だけの秘密なら、こういうのもアリかもね。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・たまには・・・たまにはね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             END