<Silent Movie>
静かな朝。
新しい年が明けて、心も新たに始めようと誰もが思う新しい朝。
僕は1人。
世の中のざわめきを聞きながら、僕はひとり。
窓から差し込む今年最初の煌きにさらされている。
まるで僕には似つかわしくない・・・。
本当の僕には夜がいい。
誰からも見つけられないような、深い夜。
朝日は、僕と言う存在を白日の下に曝して、この中に蠢く、卑しくおぞましいものを引きずり出す。
あぁ、もうヤメテ。
解っているから。
どんなに新しい年を重ねても、その度に思う。
こんな事くらいでは僕の醜さは消えやしない。
この光の中に佇んでいる事が、まるで拷問のよう。
僕はそんなに清廉潔白な奴じゃない・・・。
時々、辛くなるんだ。
僕と言う器を演じている事に。
一体、いつまで続ければいい?
一体、どこまで偽り続ければ許される?
本当の僕は違う。
本当の僕は違う。
朝の光は僕を責めているようで、瞳をあわせていたくない。
朝は嫌いだ。
僕の総てを暴き出す、朝は嫌いだ。
瞳を閉じてここから逃げ出す。
夜のまどろみに身を委ねていたい。
そうしてやっと落ち着ける。
この世界の中で僕だけが黒いシミ。
こんな苦しい事なんてない。
本当は解ってる、あこがれ、ているんだ。
その煌きに。
だけど僕には到底近寄れなくて、その事が余計に僕を苦しめる。
本当に煌いている人を、僕は知っているから・・・。
近寄れない、
近付けない。
だから、愛おしい・・・。
この煌めきの中で僕はひとり、その人の事を想う。
その事だけが僕に許されるたったひとつの贖罪。
またこうして僕は日々を重ねて行く。
僕と言う器を演じながら、僕と言う罪を犯しながら。
朝の光の中で、僕は静かに涙を流した。
END