<rest>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはは!!ホントにない!!」

 

 

ベッドの中、せっかくいい雰囲気になったのにゲラゲラ笑い転げる愛しいコイビトは、オレのいつもとは違うソコを見て面白そうに触る。

 

 

「ちょっとくすぐったいってば。」

 

 

ゾワリとする感触に軽く身を捩ると、意外と腕力のあるその人はオレを上から押さえつけてなおもぺたぺたと触る。

 

 

「なんかさ、女の子みたいだねぇ〜。」

 

 

何気ないそんな一言にピクッと反応しながら、女の子の見る機会なんて・・・クソォ!!

彼にだってそんな事があったっておかしくはないけど、一応男なんだし、それでもオレ以外とソウイウ事になってるのを想像するだけで妬ける。なんだかんだ言って独占欲だけは強いオレ。

 

舞台中に珍しいじゃんなんて言いながらオレを迎え入れてくれた彼は、どこで聞きつけたのか初日のアクシデントの事も知っていて、ケガはないの?なんてこそっと聞いてきたりして、オレってつくづく愛されてるなぁ〜なんて思ったりしたのも束の間、ニヤリと笑いながらオレが決してNOと言えない顔で、

 

 

「剃ったんでしょ?見せて。」

 

 

なんて言いだした。

 

舞台も中日、いつもなら舞台中はその役に入り込みすぎてその他の一切をシャットアウトしてしまうオレだけど、去年のあのチャーリーの時、大ちゃんが一緒にいてくれたことが何だかとっても心強かった。

もちろん舞台に立つのはオレだし役を突き詰めなきゃならないのもオレなんだけど、本番が近付くにつれて段々と煮詰まってくるその状況を知っていてくれる彼の存在はオレにとって一種の精神安定剤のようだった。

別に何か言ってくれるわけじゃないけど、舞台にはまり込みすぎて自分のニュートラルが解らなくなった時、彼の存在はひとつの支柱だった。そんな風に思ったのはその時が初めてだったけど。

 

だからいつもなら訪れたりはしない本番中に何となく彼の顔を見たくなって、まぁ・・・本音を言えば少し甘えさせて欲しくて、だって今回の役は初めての強い役でオレ的にもかなりエネルギーを消費する。

強い役って結構しんどい。最初はカッコよくっていいななんて思ってたけど、強いって難しい。さもすると冷たくなってしまいそうで、でも優しさを見せようとすると弱くなってしまいそうでそのバランスに悩む。

令嬢の時も結構精神的にきつかったけど、あの時はもっとこう・・・開き直りの強さみたいなのもあったし、弱さを隠すための強さみたいな、虚勢?

そういう気持ちはオレの中にもあるし、その気持ちを広げていく作業だったけど、今回のは性格からして違うもんなぁ・・・。頭が良くて統率力があって確固たる信念を持ってる。かなりストイックな奴。オレみたいなその場のフィーリングでは決して動かなさそうな奴。熱い男なんだよ、攻って奴は。

だからそのエネルギーを放出するのにかなりオレ自身のエネルギーも必要とする。

 

で・・・ちょっとその事に疲れちゃったんだよね。

エネルギー切れ。

だからオレのエネルギーの源の彼に、まぁ、その・・・会いたくなっちゃった・・・ってわけ。正直自分自身が一番驚いてる。

 

彼は一瞬意外そうな顔をして見せたけど、それ以上は何も聞かずオレを受け入れてくれて、久し振りに抱きしめた彼のあたたかさにホッと一息ついたところで、にこやかにそんな事を言い出したんだ。

 

 

「ねぇねぇ、これ、自分で剃ったの?」

 

 

オレのワキを見ながらそんな事を聞いて来る彼。

今回、衣装の関係でワキがもろ見えるキャストはソコをきちっとしろとのお達しが出た。ダンサーはじめ、ワキの見える男性キャストは女性よろしくワキのお手入れをする事になったのだ。

ダンサーの人達にとってはあまり珍しい事ではなかったらしく、ごく普通の顔でそのお達しを聞いていたけど、オレにとっては初めての経験で、そりゃあ理屈としては解るし、いやって訳じゃないんだけど、むしろ当然だとは思うんだけど、長年親しんだ、まぁ言うなればソコだってオレの一部な訳で、やっぱり本来あるべきものがソコにないのは何となく違和感。実際問題、何となくスースーする気がする。気のせいかも知れないけど。

 

で、そんな様子のオレをこの可愛らしいコイビトは面白そうに見てるって訳。

 

 

「ちょっと肌荒れしてるよ、ヒロ。ヒリヒリしない?」

 

 

そう言いながらその場所をそっと触る。

 

 

「うん・・・、ちょっとするかも。」

 

 

「でしょ?だって赤くなってるもん。」

 

 

って言ったそのまま、ペロンとソコを舐めてくる。

 

 

「ちょ!!大ちゃん!?」

 

 

オレの慌てぶりにまたしても爆笑しながら何度かチュッチュッとソコにキスをする。

 

 

「早く良くなりますように、おまじない。」

 

 

「おまじない・・・って。」

 

 

笑いながらそう言ってまたキスを繰り返す彼。

 

 

「もしかして大ちゃん、ワキフェチ?」

 

 

「えぇ?・・・かもしんない。」

 

 

ふざけて笑いながらそう答える彼は心底面白そうな顔をして、いつもとは違うオレのワキを堪能中。オレは両手を上に上げたままの格好で彼のされるがままになっている。

 

 

「ねぇねぇ、いっそ下も剃ってみるぅ?」

 

 

ニヤリと笑う彼の本気とも冗談とも取れるその表情に、オレはキューピーみたいになった自分の下半身を想像してゾッとした。

 

 

「ちょ・・・!!やめてよ!?いくら大ちゃんのお願いでもそれだけは勘弁だよ!!」

 

 

慌てて自分のモノを両手で隠し、彼から死守しようとするオレを見て彼はさらに笑った。

 

 

「ヒロ、顔強張ってる!!そんな慌てなくてもいいじゃん。」

 

 

「慌てるでしょ!!そんな事言うと、大ちゃんのも剃るよ!?」

 

 

彼のソコに手を当ててそう言うと彼は笑いながらゴメンゴメンと謝った。

 

 

「でもさ、そんな事したら浮気は出来ないよね〜ヒロ。」

 

 

「しないじゃん、浮気なんて!」

 

 

「どーだか。」

 

 

ケラケラと笑う彼につられるように笑う。すると彼は起き上がって、

 

 

「薬、塗ってあげる。」

 

 

整理された救急箱を取ってきた。

 

 

「僕もね〜前にやったことがあるから、多分薬があると思うんだよね。」

 

 

そう言いながらいくつかの薬を取り出してコレコレ!とひとつの塗り薬を手に取った。

 

 

「これ、きくよ〜。」

 

 

手に取った薬をオレの両ワキに塗ってくれると、やっと彼はオレの傍らに寝そべった。オレを見上げてふふっと笑う。そんな彼をぎゅっと抱きしめる。

 

 

「なんか落ち着く〜。大ちゃんだぁ〜・・・って感じ。」

 

 

「何それ。」

 

 

「なんかさ、充電切れちゃってさ。」

 

 

「充電?」

 

 

「そ。」

 

 

オレは大ちゃんの腰を抱き寄せながらそっと額にキスを落とした。

 

 

「強い役ってエネルギーいるのね。だから。」

 

 

「僕で充電しようって事?」

 

 

「そ、だって一番エネルギー効率良いもん。」

 

 

「ちょっと、それ、どう言う事!発電所みたいな事言わないでよ。」

 

 

プッと膨れてそんな事を言う彼は、それでも満更でもない様子。

 

 

「だってさ〜大ちゃんに会うと満たされるんだよね〜。発電所じゃないけど、給油所?」

 

 

「ガソリンなんだ、僕。」

 

 

「そ、ハイオクだよ。」

 

 

そんな事を言いながら笑いあって、素肌が触れ合うそのぬくもりにセックスとは違う充足感を分かち合う。

 

 

「大ちゃん、見に来てくれないの?」

 

 

「う〜ん・・・僕も稽古があるからね。」

 

 

「そっかぁ・・・執事、だっけ?」

 

 

「そう。お芝居ってやっぱり慣れないよ。ヒロ、ホントすごいと思う。」

 

 

コテンとオレの肩に頭を乗せて彼が言う。洗いざらしの髪からほんのりいつもの香りがする。

 

 

「芝居・・・難しいよ。オレ、今回、結構迷ってるもん。」

 

 

「そうなの?」

 

 

「うん・・・。強いって、なんだろうね。」

 

 

オレは彼の頭に自分の頭を傾けて聞く。

 

 

「力が強い人が強い人なのかって言われたら、必ずしもそうとは限らないし・・・。強いってどういう事なのかな・・・って。」

 

 

「ヒロは優しい人だもんね。」

 

 

彼がくすりと笑って言う。

 

 

「え?そうかな?」

 

 

「そうだよ。時々いい加減な事もあるけど。」

 

 

「えぇ?そんな事ないよ。」

 

 

「あるよ。めんどくさいんだなってすぐ解るもん。」

 

 

オレを知り尽くした人は笑いながら痛いところを突く。

 

 

「でもさ、強い時もあるよ。そういう時のヒロはほんと、カッコイイ。」

 

 

きゅっとオレの脇に身体を丸めて言う。

 

 

「いっつも強い人なんていないと思うよ。譲れない何かがある時だけ、人は強くなれるんじゃないのかな。

立場とか状況とか、そういうものが人を強くしてるんで、生まれた時から強いなんて事はないと思うけど、僕は。」

 

 

「そ・・・なのかな・・・?」

 

 

オレの問いかけに彼は何かを想像したらしく、1人吹き出した後に言った。

 

 

「だって、生まれた時から強い赤ちゃんとかいたら怖いじゃん。」

 

 

彼の言葉に何故かオレの頭の中ではいつかの番組で彼がしていたアイマスク姿の彼の赤ちゃん版がよぎった。

 

 

「怖いかも・・・。それ、怖いかも!!」

 

 

オレもたまらず笑い出す。

 

 

「ね〜〜怖いよね〜〜。」

 

 

彼も恐らく頭の中の光景は同じなんだろう。2人してその存在しない赤ちゃんを想像して笑った。

 

 

・・・なんか、解ったかも。

 

 

彼の何気ない一言はオレにとって大きな一言だった。

 

オレは楽しそうに笑っている彼をぎゅっと抱きしめて言った。

 

 

「サンキュ、大ちゃん。やっぱり大ちゃんはオレのエネルギーだね。」

 

 

「またガソリン扱い?」

 

 

「ハイオクだから!」

 

 

「ハイハイ。も〜好きにしなよ。」

 

 

「うん、そうする!」

 

 

「うわっ!バカっ!!そういう意味じゃないっっ!!」

 

 

「満タンにしたいんだけど?」

 

 

オレは彼の目を見てそう聞く。膨れた彼はジロッとオレを睨んだけれど、

 

 

「・・・このガソリンは高いぞ。」

 

 

そう言って軽いキスをくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    END 20100125