<レイン>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛したい、愛して欲しい。もっと君を感じていたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

窓を打つ雨音に絡めた指先を見つめる。

まどろみの中うっすらと開けた目。目の前で上下する滑らかな胸にうっとりと瞳を開けた。

 

 

緩やかに聞こえる彼の寝息。うっすらと開いた唇が小さな音色を漏らす。

絡めた指先はそのままに、きゅっと彼の胸元に頭を寄せた。

小さな呻きに起こしてしまったかとドキリとするが彼の瞳は閉じられたまま、もう片方の腕が無意識に僕を抱きしめた。

 

 

彼の体温に包まれる。

彼の匂い、彼の温度。

心地良いと思うにはもうあまりにも長くここに居過ぎたせいで、すでにそれすら自分の一部になっている。

 

 

彼の存在が好きだ、

彼の柔らかい寝息が好きだ、

彼の肌が好きだ。

 

 

僕のものと言うにはあまりにも贅沢過ぎる気がしてそれを口に出せない。

でも、彼は笑って全部あなたのものだよと、あまりにも贅沢過ぎる言葉を僕にくれる。

僕の方こそ・・全部君のモノなのに。

 

 

全部をあげる、全部を捧げる。

それでも余りあるほどの気持ちを、想いを僕は彼からいつも貰っている。

 

 

雨音が静かに、まだ明けない夜の中、僕達に降る。

 

 

まるで世界から切り離されたみたいだ。

ここには彼の寝息しかない。

僕達の他には何も。

 

 

絡めた指先、摺り寄せた肌をそっと感じながら、じっと彼の上下する肌を見つめる。

 

 

このままの時間がずっと続けばいい。

 

 

彼の寝顔に僕は寄り添い、僕だけの時間をそっと味わう。

 

 

もっと愛したい、もっと愛して欲しい。

けれど、怖い。

失うのが怖い。

 

 

目を覚ましてしまったらきっと何処かへ行ってしまうから、僕の事など忘れてしまうから、

今絡めた指先を、寄り添える肌を僕は・・・。

 

 

抱きしめられれば抱きしめられるほど僕は苦しくなる。

好きだから離したくない、好きだから彼のままでいて欲しい。

僕の気持ちは君のすべてを・・・。

 

 

雨音が僕達を包む。

 

このまま、

 

このまま。

 

 

彼の寝息を聞きながら哀しく祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

END20100514