<君の笑顔が見たいから>






アレ?これ・・・。

そう思って足を止めた先にはよく知るキャラクター。
こんなところで目にするとは思っていなかった博之は思わず我が目を疑った。


急に寒くなってきたから上着でも見ようかと、実家近くのアウトレットモールへ寄り道した博之はそこで目にしたものに思わず釘付けになった。
ディスプレイのマネキンの肩にかけられている、おおよそそのショップのディスプレイとしては目にすることの無いもの。
よく見ればどうやらコラボをしているらしく、博之が目にしたもの以外にもいくつかお馴染みのキャラクターが並んでいた。

ウィンドウの外からじっと凝視していると中の店員さんと目が合い控えめに、よろしければ中へどうぞ、と会釈される。
中からも気付かれるくらい凝視していた自分に乾いた笑いを浮かべながら、そういう事なら中でじっくり見させていただきましょうとショップのドアを開いた。



今年も間も無く彼の誕生日がやってくる。1年は本当にあっという間だ。
去年は初日が彼の誕生日の翌日で、ゲネの時にお祝いをし、なんで初日が自分の誕生日じゃないんだとブスくれる彼をスタッフと一緒に笑った。今年は1週間ほどずれているせいかさすがにそんな駄々はこねていないが。

大抵毎年自分のソロライブが終わりaccessのリハーサルが始まる頃、ライブの構成とはまた別に頭を悩ませるのが彼への誕生日プレゼントだ。
もちろんどんなものでも喜んで受け取ってくれるのだが、それでも少しでも彼が気に入るもの、彼が使ってくれるものを送りたいと思う。
最近は彼の健康の事なども考え、そういったものに偏り過ぎていたかもしれないなと軽く反省した。

だから今年は彼が欲しがるものを出来ればプレゼントしてあげたかった。
そう思うとなかなかにハードルが高く、基本、欲しいものは自分で手に入れてしまえる人だから持っていないものを探す方が大変だった。

さて、今年は何を送ろうか、頭の片隅でずっと考えていたタイミングでたまたま目にしたのがこれだった。

彼の大好きなキャラクターがプリントされたボディバッグ。小振りだが必要最低限のものなら入りそうな調度いい大きさだと思う。
これを彼が肩掛けしたところが簡単に想像できる。絶対に似合う確信がある。
ディスプレイはベースの色が白だったがサンプルとして展示されていたのは同じタイプの黒、プリントのテイストの違う茶色のものもあり、手に取って内容量などを確認していると店員さんが今年の秋冬の限定品だということを教えてくれた。
限定品ならばもしかしたら持っていない可能性の方が高いかもしれない。
そう思ったが、どこかでこういったものを彼がつけていたような気がしてならない。

もし、もう持っている物だったら。
こんなに鮮明にその姿が思い描けるというのは、やはりどこかで目にしたからなのかもしれない。

博之がそう逡巡する間にも店員さんの説明は続く。
肩掛けだけではなく斜め掛けも出来るというのはいい。それなら犬の散歩をする時も両手が空いて危なくない。あのパワフルなやんちゃ姫を連れて歩くのなら両手が使えた方が絶対にいい。

きっとこれなら喜んでくれるはず。
だがもし持っていたら、そう思うともう少し違うものを考えても良いのかもしれない。
悩んだ末、一旦店を後にした。この店なら都内にもある。どうしてもと思った時にはそちらに買いに行けばいい、そう思った。



気持ちを切り替えて久し振りのウィンドウショッピングを楽しんでいたが、やはり先ほど見たあのバッグが気にかかる。
絶対に似合う。
喜ぶ顔も見える。
他のものなんてもう思い浮かばない。



「ダメだ。もうアレ。」



気もそぞろになっていたウィンドウショッピングを切り上げさっきの店へと戻る。
もし彼が持っていたとしてもいいじゃないか。腐るものでもなし、きっとひとつのものを大切に大切に使う彼だから、もうひとつ予備があると思ってもらえばいいじゃないか。
心の中で決断するための材料をいくつも並べ、再びショップのドアを開ける。
やはりディスプレイにかかっているあのバッグは彼によく似合うに違いない。



「スイマセン。コレいただけますか?白いやつ。プレゼントで。」



先程会釈してくれた店員さんが、在庫を確認してまいります、とにこやかに告げてバックヤードに下がっていく。
うん、今年のプレゼントは彼もきっと喜んでくれる。
自分でも満足のいくものを用意することが出来て、受け取った時の嬉しそうな彼の顔を想像していると戻ってきた店員さんが申し訳なさそうに告げた。



「すみません、そちら在庫を切らしておりまして、他の色であればご用意が出来るのですが・・・。」



そう言って見せてくれた色はどれも彼のイメージではなく・・・。



「白ですとディスプレイのものになってしまうのですが・・・。」



再び申し訳なさそうに告げられた言葉に妥協は出来ず、プレゼントにディスプレイ品など以ての外で。
次回入荷日もオンラインでの注文も案内されたが、かなりライブ直前で。
あれだけ迷って決断してきたからなのか、ここまで来ると今すぐ現物を手にしたいという生来のせっかちな性分がどうしても譲らず、



「今、置いている店はどこですか?都内でありますか?取り置きしておいてもらえたら今から取りに行きますから。」



そう言って店員さんを困らせた。
しばらくすると、確認します、と都内の在庫を当たってくれていた店員さんがこちらの店舗でなら、と車でも行きやすいところをピックアップしてくれていたことに感謝し、教えられた店舗へ車を走らせた。
ロゴが丸見えなラッピングを隠すために100均でさらにラッピング商材を購入し、準備万端。
はたして受け取った彼は予想以上の満面の笑みで、持っていない、と自分から抱きつきに来た。
ほっと胸を撫でおろし、案の定、よく似合うそのバッグをファンに自慢げに見せびらかすその姿を見ていると、あの時これに出会えてよかったと思う。
プレゼントも縁だと思う。きっと自分はそういうところの引きがいい。
自分が見ていた姿そのままの彼を目の前にし、オレがあげることが決まっていたのかもしれないね、と言うと彼は、



「運命だね。"おんりーざらぶさばいぶ" だね。」



と言って満面の笑みを見せた。





 

END 20231126