<X'mas Song>








「君じゃないとダメなんだ。」


確かそんな言葉で、祈るようにぬくもりが指先を包んだ。あれはいつのクリスマスだったか。
 
 






出会った頃の話をしよう。今でも忘れない、それは鮮烈でそれでいて柔らかな印象。
出会った事のない人種で面食らった事を今でも覚えている。その外見とは裏腹に優しく、でもかなり緊張した表情が印象的だった。

キレイな人だった。その時は顔の造作がと思っていたが、2人で過ごすうちに立ち振る舞いや細やかな所作、そして心根がキレイな人なのだと気付いた。
きっと大切に大切に育てられてきたんだろうなと、彼の先にある愛情を感じずにはいられなかった。

キレイな魂を持ったキレイな声の主は気付くと心を占拠し、彼の視線から、唇から音が溢れ出してくるイメージさえ僕に抱かせた。
事実彼を思えばいくつもの旋律がすぐに体内を駆け回り、それを形にするスピードが追い付かないほどだった。

思いは、パートナーに対するそれであると信じて疑わなかった。
目まぐるしく流れていく時間の中で変わらない唯一のもの。ずっと隣にいて誰よりも近くにいて、まるでひとつの人格のように齟齬などあるはずがないと疑いもしなかった。
だから最初に小さな違和感を感じた時にはさして気にも留めなかったのだ。秒刻みのスケジュールの中で疲弊していた事は否めなかったし、長い間に気を許した気を遣わなさがその違和感を重要視しなかったのも事実だ。
気付いた時にはもう遅かった。別の人格なんだと突き付けられた時にはもう取り返しがつかないところまで来てしまっていた。

彼は声を荒げるでもなく冷えた口調で言った。


「オレは楽器じゃない。」


レコーディング中にそう言ってブースから出て行った彼は、その日戻る事はなかった。
スケジュールが立て込んでいる中でそうする事がどれだけこの後のスケジュールに影響を与えるか知らないはずではないはずなのに、それをしても戻ってこなかったその意味に、初めて青ざめた。間抜けな話だ。

今なら彼の言わんとしている事は解るが、その当時の自分にはそこまで考えが及んでいなかった。何にでもいいよとチャレンジしてくれる彼に甘えていたのだろう。
自分の納得する音が欲しくて、歌い手の気持ちなど無視したディレクションをしていただろう自分に、彼は一体いつから不満を持っていたのだろう。彼にだって求める音があったはずなのに。


それが全ての原因とは言わないが、結局僕らは先を続けることが出来なかった。
あの後もおとなしくレコーディングは進み、一応の形にする事は出来たものの、恐らくそれはすり合わせの結果としか言いようのないもので、もしかしたらもっと別の可能性があったかも知れないことには一切目を瞑った結果だった。
手抜きをしたと捉えられる事は憤慨ものだが、当初目指していた事には100%発揮したが、120%いろんな可能性を探ったかと聞かれたら口をつぐむしかない。それほどまでにお互いの気持ちは歪んでいた。

そして長い年月の不在を噛み締めた。
あの時点で彼に対する恋心のようなものがあったのかどうかは定かじゃない。
好きだったし、ずっと一緒に居たいと思っていたが、それが音楽のパートナーとしてのそれなのか、恋愛感情のそれなのか判断は難しい。
それほどまでに近くにいすぎて互いを意識する暇がなかった。確実に意識し始めたのは離れた後だ。
だからもしかしたら初めて会った時からそれは恋心に限りなく近いものだったのかも知れない。















再会した時の事を話そう。
腫れ物に触るような数年を過ごした後、時効だと思ったのか、ようやくスタッフの口にも彼の名前がのぼるようになってきたのはいつの頃からだったか、僕にとってはとても長い、そして離れた瞬間からずっと心の中に蟠り続けてきた言葉だった。
彼を振り切るように新しい事をいくつも始め、音の中に身を埋めていれば、あるいは今度こそボーカリストの気持ちを汲んだ振る舞いが出来るかも知れないと気持ちも新たにスタートしたつもりだった。
しかしその先には打ちのめされるような事ばかりが待ち受けていて、その時になって初めて彼の対応力、臨機応変さに気付かされた。
彼が笑いながらやっていた事、悲鳴をあげながらも次の瞬間にはきちんとものにしてきていた事、そのどれもが稀有な事だったのだと他のボーカリストを見れば見るほど身につまされた。

そんな彼が口にした言葉を思うと胸が痛かった。あるいはソロになって自分が歌う事を経験したから余計にそう感じられたのかも知れない。

謝りたい。
許されるのならばもう一度、彼を自由に歌わせてあげたい。

蟠っていた思いは謝罪の念だけではなかった。苦しい時、彼の優しさにどれだけ救われたか、彼の前向きな姿勢がどれほど自分の背中を押してくれていたか、なくなって初めて気付くその空虚さに1人で立つ事の怖さを知った。
人はいつだって1人だ。そんなことは解っている。例えユニットを組んでいたと言ってもそれは個と個の集まりに過ぎない。そんな事は充分に解っている。多くのプロデュース業がそうであったように、どんなに仲良くなろうともビジネスでの関係性なのだ。だけど。


会いたい。そう思った。
先の事なんか解らなくてもいい、ただ会いたい、純粋にそう思った。


「大ちゃん。」


彼の声で呼ばれる自分の名前が特別なもののように感じられた。
彼が好きだ。この時にはもう疑う余地などなかった。
彼が好きだ。自分の音色にあったボーカリストだからではなく、彼のこの存在が自分にとってはかけがえのないもので、たとえ彼がその声を失ってもこの気持ちは揺るがないと思った。
僕のソロの企画から会う時間は増して行き、もう失えないと思いつめた僕は再開を口にした。清水の舞台から飛び降りるような気持ちだった。もしここで拒絶されたら、恐らくどんなに希っても二度と彼と共に歩むことはなくなるだろう。彼は後ろを振り返らない。それは再会してここ数回で確信に変わった。
恐ろしく長い数秒だった。自分で聞いておきながら答えを聞くのが怖かった。


「オレは楽器じゃないよ。」


静かに告げられた言葉に一瞬にして凍り付く。あの時の言葉を、彼はずっと覚えていた。僕の罪も。


「ごめん・・・。」


解っていると何度も頷きそれだけ言うのが精いっぱいだった。
どんな言い訳も通用しない。あの時彼を傷付けた事実は消えやしない。彼の気持ちを慮らなかった、自分の理想だけしか見てこなかったのは僕だ。決して楽器だなんて思った事はなかったし、そんな振る舞いをした自覚はないけれど、彼にとってはそうであったのは紛れもない事実だ。


「オレじゃなくてもたくさんボーカリストはいたでしょ?」


淡々と告げられる言葉が痛かった。彼は望んでいない。この数年、僕だけが立ち止まったまま彼を思い続けていた事を突き付けられ、絶望的な思いが足元から這い上がって来る。
この拒絶は一生の拒絶だ。僕達の間には音楽しかない。パートナーとして望まれていない僕がどうして彼の傍にいれるだろう。
言葉を失った僕を見つめる視線が不意に和らぐ。


「・・・ごめん。嘘だよ。あなたがそんなつもりじゃなかった事はよく解ってる。オレも子供だったから。」


変わらぬ優しい声音で告げられて、内容を上手く理解出来ないまま見上げた先で大人びた顔で笑う彼と目が合った。


「・・・また、大ちゃんの音で歌ってもいいかな・・・?」


留めていた何かが溢れるように一気に視界が滲んだ。それが自分の涙だと気付く前に彼の腕が強く僕を抱きしめていた。


「戻って、いい・・・?」


耳元で問われる言葉に嗚咽でしか答えられなくて、僕は精いっぱいの思いで頷く事しか出来なくて・・・。




夢のような返答を実感出来たのは公に発表をして本格的にレコーディングが進み始めてからだった。
ツアーの日程も決まり同じ時間を過ごす事が増えてくると最初は慣れなかった隣の存在が思い出したかのようにすんなりと埋まって行くのを感じた。

もう二度と、あの時のような失敗はしない。

彼を自由にすると心に誓ったつもりだったが、そうとは思っていても独占欲が首をもたげた。
隔絶されていた数年間を思えばこうしてパートナーとして隣に立たせてもらえている事、彼が手の届く場所にいる事は幸福な事だったが、その分その近さが苦しくもあった。
彼は相変わらず優しく、1人で過ごしてきた時間にいろいろな事を経験してきたのだろう、あの頃よりもずっと頼もしくなっていた。
安心して背中を預けられる、その事がともすると心のガードを下げてしまいそうになる。

彼はパートナーであって、恋人じゃない。どんなに近くにいてもこの気持ちを共有する事は出来ない。
好きの気持ちは日に日に募っていく。視線は気付けば常に彼を追っている。他のスタッフに気付かれないかと不安になるほどに。


変化は思いもかけないところからやってきた。少し前からその予兆はあったものの決断を迫られる時がきた。
折角掴んだ場所を手放す事になるかも知れない。彼を歌わせ続ける事が出来ないかもしれない。
業界内を突如として襲ったCCCD問題は音にこだわり続けてきた僕にとっては看過できない問題だった。僕らの銘を打っておきながら不完全なものを世に出す事は出来ない。それは僕の矜持だった。
でもその事に彼まで巻き込む事は出来ない。僕が首を縦に振らない限り、彼の声は・・・。
その事を思うと簡単には答えを出せずにいた。
僕が彼を手放せば、彼はまた別の場所で歌うことが出来るだろう。けれどその時にはもう、二度と同じ道を歩むことはないだろう。彼の声も、彼の存在も永遠に失われる。そんな状況にもう僕はきっと耐えられない。けれど彼の自由を考えるなら僕のエゴでしばりつけていいはずなんてない。歌う場所を失ってなお、自分の傍にいて欲しいとは言えるはずがなかった。


「大ちゃん。」


夜遅く、もうみんな帰ったと思っていたところにひっそりと彼が佇んでいた。
相変わらず彼の声は優しかった。この声を失う事を思うと息が止まりそうになる。


「帰ってなかったんだ。」


笑う事にも疲れてぎこちない表情しか作れない僕に彼はそっと近付きガチガチになった肩をやんわりと揉んでくれた。
沈黙の時間。
肩に温かいぬくもりを感じながら、その優しさに涙が出そうになる。この手を、離したくない。


「・・・やめよっか、僕達。」


涙声にならないように必死に堪える。


「ヒロにまで我慢させたくない。」


肩を揉んでいた手が緩やかに止まる。じんわりと広がっていく最後のぬくもり。


「この先僕といても発表する場はないかも知れない。頑張って作るつもりではいるけど、それがどれくらい先の事になるか解らない。それなのに、ヒロに待っててとは、言えない。accessをやめて、ソロなり、他の人と組むなりすればこんな思いはしないで済む。だから、」


「大ちゃんはそれでいいの?」


頭上から降って来る言葉に顔があげられなかった。
いいはずなんてない。どこにも行かないで欲しい。けれどそんなわがままを言ってしまえるほど子供ではなかった。
答えられない問いに口を噤んでいると肩に乗せられた手にグッと力がこもった。


「解った。」


そう言って離れるぬくもり。この手を、離してしまった。永遠に・・・。
唇を噛んで漏れそうになる声を噛み殺す。せめて彼がこの部屋から出て行くまで、彼に未練を残させないために。
パタンとドアの閉まった音に詰めていたものが一気に溢れる。さっきまで触れていた肩のぬくもりを掻き抱くように手を這わせ、冷たくなってしまったその場所を握りしめる。
もうあのぬくもりに触れる事は叶わない。もう二度とあの優しさに触れる事は叶わない。自ら選んだ事だとは言え身を裂かれるように痛い。
これで良かったと思える日が来るのだろうか。そんな日は来ない。解っている。けれどそう思わないといけないのだ、きっと。彼のために。
止める事の出来ない涙は後から後から零れ落ちてくる。彼を失った心が血を流し続けるように。
あと何度、全てが終わるまで彼に会えるのだろうか。その時、僕は笑っていられるのだろうか。今でも好きで好きでたまらない。この先、彼以上に想える人はもういない。


「泣くくらいなら引き止めてよ。」


急に聞こえた声にビックリして振り返ると、ドアの横で腕を組みながらこっちを見ている彼がいた。


「どう、して・・・。」


思考の追いつかない頭を必死に回してようやっと彼が本当はドアだけを閉めて部屋からは出て行っていなかったのだという事に気付く。途端に込み上げてくる羞恥心に顔を背け慌てて涙を拭ったが、近付いてきた彼の手が濡れた指先を包んだ。そのままイスに座る僕の前に跪くと下から覗き込んでくる。


「オレはあなたの何なの?勝手に答えを出さないで。オレは、オレの意思で、あなたとここにいる。全部解ってる。」


力強い瞳。見つめられただけで縋ってしまいそうになる。
彼の思う気持ちと僕のこの気持ちが違う事が解っていても錯覚しそうになる。


「でも・・・それじゃあ・・・。」


「オレが良いって言ってるの。何か問題があるの?」


真っ直ぐに問われて視線を逸らした。
すると大きなため息の後、握った指に力を込められた。


「大ちゃんはいろいろ考えすぎ。もっと素直になりなよ。少なくともオレには。」


甘やかすような声音で告げられると絆されてしまいそうになる。
無自覚にこんな事の出来る優しい彼は僕の中にあるこの淀んだ感情なんてきっと知りはしないんだろう。彼の言うように素直になんてなれるはずがない。今だって必死に抑えつけているのに、これ以上優しくしないで欲しい。そう頭では考えるのに錯覚でももっと甘やかされたい自分がいる。


「で?何か言いたい事、あるでしょ?」


じっと見つめてくる視線からは抗いがたく、逃れようと視線を逸らしてみてもすぐに咎めるように名前を呼ばれる。


「ねぇ大ちゃん。オレが短気なのは知ってるよね?言って。オレ、いなくなってもいいの?」


突き放すようなセリフに思わず首を振る。それでも口を開けずにいる僕に彼は小さくため息をついて立ち上がろうとした。


「待って!!
・・・君じゃなきゃダメなんだ。」


咄嗟に口を突いて出た言葉は理性とはかけ離れた本能的なセリフ。
絞り出すように吐き出した言葉に立ち上がりかけた彼がスッと跪き、握ったままだった指先に神聖な誓いのような口づけを落とす。


「やっと言ってくれた。」


指先から熱が伝わってくるようで上手く状況が理解出来ない。


「・・・ヒロ、何してるの・・・?」


「何してるって、愛の告白でしょ?」


「ちが・・・っ!!ユニットの話でしょ!?だって・・・。」


「ホントにそれだけでいいの?ユニットの話にして、おしまいにする?」


覗き込んでくる彼の瞳はとても柔らかく、黙って僕の答えを待っている。それなのに彼の言葉を理解するのを拒んでいるかのように僕の頭は考える事を止めてしまって、ただ目の前で僕を見ているその瞳を不思議なもののように感じて見つめ返していた。
すると彼が目の前でクスリと笑った。


「ずっと待ってたんだよ?」


「・・・なに、を・・・?」


目を細めて笑う彼の意図が解らず、思わず問い返す。困った顔をして見せた彼はしばらく考えた後思いついたように口を開いた。


「じゃあ、クリスマスプレゼントに大ちゃんをちょうだい。」


「・・・ぼくを?」


「うん。君じゃなきゃ、ダメなんだ。オレも。」


柔らかく笑んだ彼はどこか照れくさそうで、それを誤魔化すかのように濡れたままだった僕の頬を優しく拭った。


「ねぇ、ちゃんと伝わってる?オレの言ってる事、解る?」


何もかもが信じられなくて、もはや理解しようという気もおきなくてゆるゆると首を振った。だってこんな事あるはずがない。


「もうしょうがないなぁ。じゃあ、特別ね。」


そう言って唇に静かに触れた熱いぬくもり。それが彼の唇だという事に気付くまで幾度となく重ねられていく。何度目かの口づけで焦れた彼の唇が下唇を甘く食んだ感触に一気に体温が上がる。


「・・・っ。」


間近に彼の端正な顔が見えて思わず突き放す。それでも彼は笑ったまま、包んでいたその指に再び誓いのキスを落とした。


「オレの気持ち、今度こそ伝わった?」


感情が追い付かない。僕は何の話をしていたんだろう。彼は何の話をしているんだろう。それでも彼の真っ直ぐな瞳だけは嘘がないと解る。それならば・・・。


「あなたが好きだよ。大ちゃん。だからやめるもやめないもない。あなたが行きたいところへ一緒に行く。迷う事なんて何もない。」


優しく告げられた言葉。制御不能になった感情の中でそれだけが唯一の標のように僕には感じられた。あの時から・・・。
















 
閉じていた瞼を開けるともう夜の帳は降りていた。日暮れのグラデーションがキレイだなとぼんやりしていたはずが、そのままうとうとしていたらしい。
随分と前の事を思い出していた。
あの時、思考回路がショートしていた僕に気付かなかった彼は呆れるくらい愛の誓いを繰り返した。何とかして解らせようとしたのだろう、せっかちな彼らしい。その誓い通り、彼はその後ずっと傍にいて、なかなか信じようとしなかった僕の心をゆっくりと丁寧に解いてくれた。全部解ってると言った彼の言葉はそういう意味も含んでいたのだと気付いたのはどのくらい後だったか。
あんなに隠していると思っていたのに解られていたんだと思ったら何だか悔しいし、その時の自分の様子を思うと恥ずかしい。
一生叶う事はないと思っていた。秘めたままで一生を終えるのだと思っていた。すべてが良い事ばかりではなかったけれど、こうして今、穏やかな時間を過ごせているなんてあの頃には思ってもみなかった。


「アレ?大ちゃん、起きたの?」


背後から聞こえた声に振り返るといつもと変わらない笑顔がそこにあった。


「来てたなら起こしてよ。」


「だって気持ち良さそうだったから。」


そう言いながらするりと当たり前のように隣に座る。もう今ではこの距離に慣らされてしまった。
Siriに命じて暗くなったブラインドを閉じると彼の肩に頭を預けた。


「思い出してた。随分前のクリスマスのこと。」


ポツリと話し出した言葉の先を促すように彼の手が僕を抱きしめる。


「僕もプレゼント、ねだればよかった。」


「貰い忘れたの?」


「ねぇ、まだ有効だと思う?」


覗き込むようにして伺うと端正な顔が試案の顔になる。


「どうかな?でも取りあえず言ってみたらいいんじゃない?」


楽天的な彼らしい返答に唇の端で笑って向き直ると、彼の目を見つめた。


「プレゼントに、ヒロをちょうだい。君じゃなきゃ、ダメなんだ。」


驚きの表情が同じ記憶に辿り着くと頬を緩ませた。抱きしめようと伸ばした手をすんでのところで思い留まり、そっと指先を包んで誓うような口づけを落とす。あの時のように。
指先に熱を灯して唇が離れていく。
優しくキレイな彼は美しい音色で


「よろこんで。」


そう言って微笑んだ。

 




とあるクリスマスの日のお話・・・



 
 

END 20191224